Spectral Repair(スペクトラル修復)[STD & ADV]
概要
スペクトラル修復は自然な音像を保ったままファイル内の不必要な音をインテリジェントに削除します。
スペクトラル修復は時間と周波数のスペクトログラム/波形画面上の選択範囲に対して補間を行うツールです。
修復したいノイズを範囲指定し、その上でスペクトラル修復を適用すると、ノイズのレベルをノイズフロアーまで低減させたり、選択範囲周辺のオーディオと入れ替えたり、あるいは、その箇所にフィットする完全に新しいオーディオを生成することができます。
Attenuate(減衰)
このモードでは、選択範囲の内外のオーディオを比較した上でノイズの除去を行います。
減衰モードは、選択範囲周辺のスペクトログラムの光度に合わせるべく、選択範囲内のスペクトログラムの光度が減じられ、結果として、バックグラウンドに可聴なギャップを残すことなくノイズの除去が実現します。
減衰モードでは、オーディオの再生成は行われません。ここでは、周辺のオーディオに対して類似しない箇所の改善が行われます。
このモードは、バックグラウンドのノイズ、あるいは音楽の根底となるパート(ドラムやパーカッションなど)にノイズがあり、その素材自体が正確に加工されなくてはならない場合に最適です。また、これは、それらノイズが信号本体を聴き難くするレベルに達していない時にも有効です。
例えば、このツールを使用すると、バタンと閉められたドアーの音や椅子のきしむ音などを不可聴なレベルまで引き下げ、周囲の音に溶け込ませる事が可能です。
の操作項目

- BANDS(バンド数): 補間に使用される周波数帯の数を選択します。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- 低い数値は短い選択範囲、あるいは瞬間的な信号の処理に適しています。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- SURROUNDING REGION LENGTH(リージョン周囲の長さ): 補間に使用される周囲の成分の範囲を設定します。
- STRENGTH(強さ): 減衰の強さを設定します。
- MULTI-RESOLUTION(マルチ解像度): マルチ解像度機能は、低周波数帯の補間を行う際により良い周波数解像度を使用し、高周波数帯の補間を行う際により良い時間解像度を使用します。
- BEFORE/AFTER WEIGHTING(比重箇所の前後): 選択後または選択前に周囲のオーディオに対して比重を与えます。
- DIRECTION OF INTERPOLATION(補間の方向): 修復処理に使用する素材と選択範囲との位置関係を決定します。
- HORIZONTAL(水平): 選択範囲の左右の信号が補間に使用されます。
- VERTICAL(垂直): 選択範囲の上下の信号が補間に使用されます。
- 2D(二次元): 選択範囲の上下左右の信号が補間に使用されます。
注: 補間方向の操作項目
- Attenuate以外のモードは全てHorizontalモードを使用し、このオプションは表示されません。
- Attenuate以外のモードは全てHorizontalモードを使用し、このオプションは表示されません。
- HORIZONTAL(水平): 選択範囲の左右の信号が補間に使用されます。
Replace(置換)
このモードは音の欠落など損傷が激しい場合に使用します。このモードでは周囲にある類似する箇所を探し出し、それを元に補修部分に適用します。
の操作項目

- BANDS(バンド数): 補間に使用される周波数帯の数を選択します。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- 低い数値は短い選択範囲、あるいは瞬間的な信号の処理に適しています。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- SURROUNDING REGION LENGTH(リージョン周囲の長さ): 補間に使用される周囲の成分の範囲を設定します。
- MULTI-RESOLUTION(マルチ解像度): マルチ解像度機能は、低周波数帯の補間を行う際により良い周波数解像度を使用し、高周波数帯の補間を行う際により良い時間解像度を使用します。
- BEFORE/AFTER WEIGHTING(比重箇所の前後): 選択後または選択前に周囲のオーディオに対して比重を与えます。
Pattern(パターン)
このモードでは周囲にある類似する箇所を探し出し、それを元に補修部分に混ぜ合わせます。
Patternモードは損傷が激しく、オーディオにバックグラウンドのノイズが乗っている、あるいはオーディオに繰り返し部分がある場合に最適です。
の操作項目

- BANDS(バンド数): 補間に使用される周波数帯の数を選択します。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- 低い数値は短い選択範囲、あるいは瞬間的な信号の処理に適しています。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- SURROUNDING REGION LENGTH(リージョン周囲の長さ): 補間に使用される周囲の成分の範囲を設定します。
MULTI-RESOLUTION(マルチ解像度): マルチ解像度機能は、低周波数帯の補間を行う際により良い周波数解像度を使用し、高周波数帯の補間を行う際により良い時間解像度を使用します。 - PATTERN SEARCH RANGE(パターン検出幅): 補間の為に検索されるオーディオの長さを決定します。例えば、5秒に設定されている場合、指定範囲の+/-5秒間内で検索が行われます。
Partials + Noise(パーシャル+ノイズ)
このモードはReplaceモードの進化版です。これは、ハーモニクス感度パラメーターによりオーディオのハーモニクスを復元します。
このモードは、破損したインターバルの両端のハーモニクスを明確にし、合成部分でその両端をリンクすることにより高品質の改変を実現します。
Partials + Noiseはビブラートを含むピッチ変調に対する改変も可能です。残りの非ハーモニクス成分(剰余)はReplaceと同じ方法で改変されます。
の操作項目

- BANDS(バンド数): 補間に使用される周波数帯の数を選択します。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- 低い数値は短い選択範囲、あるいは瞬間的な信号の処理に適しています。
- 数値がより高いと周波数解像度は高まりますが、補間の解析により広い周辺エリアを必要とします。
- SURROUNDING REGION LENGTH(リージョン周囲の長さ): 補間に使用される周囲の成分の範囲を設定します。
- HARMONIC SENSITIVITY(ハーモニクス感度): 検出しリンクするハーモニクスの量を調節します。
- この値が低いと検出されるハーモニクスは減ります。
- この値が高いと検出されるハーモニクスの量は増加する傍ら、補間の結果不自然なピッチ変動が生じる事があります。
- この値が低いと検出されるハーモニクスは減ります。
- MULTI-RESOLUTION(マルチ解像度): マルチ解像度機能は、低周波数帯の補間を行う際により良い周波数解像度を使用し、高周波数帯の補間を行う際により良い時間解像度を使用します。
- BEFORE/AFTER WEIGHTING(比重箇所の前後): 選択後または選択前に周囲のオーディオに対して比重を与えます。
リージョン周辺の表示
- リージョン周辺の濃淡: スペクトラル修復を使用すると、選択範囲はドット線で表示されます。このドット線は、スペクトラル修復モジュール内のSurrounding Region及びBefore/After Weightingで操作でき、これにより設定値を視認することができます。
- このSurrounding RegionはRXが改変する選択範囲のリージョンにあたります。Surrounding Regionのデータは選択されたリージョンの修復の際に使用されます。
- このSurrounding RegionはRXが改変する選択範囲のリージョンにあたります。Surrounding Regionのデータは選択されたリージョンの修復の際に使用されます。
ワークフロー
スペクトラル修復の適用
- スペクトラル修復を使用するには、先ず波形/スペクトログラム操作スライダーを右方向にドラッグし、画面をスペクトログラムにします。
- 次に、時間・周波数選択ツールを使用の上、不必要箇所を特定し範囲選択します(必ずしも周辺リージョン全体を範囲選択する必要はありませんので、該当イベントのみ選択してください)。
- 範囲選択された箇所は、RXのトランスポートにある“選択範囲を再生”ボタンを押す事により試聴できます。
- 修復個所を見つけた後、スペクトラル修復の設定画面上部にあるタブより、該当する補間モードを選択します。
- 設定比較機能を使用すると、処理を適用する前に試聴できます。
更なる情報
ここでは、スペクトラル修復モジュールを最大限に活用する上で有益な情報、例、そしてヒントを紹介します。
実例画像
下図は、上が選択範囲に対してスペクトラル修復を適用する前で、下が選択範囲に対してスペクトラル修復を適用した後です。

処理の制限
スペクトラル修復はモードや設定により処理を適用できるオーディオの尺が異なります。
- 無制限 — AttenuateのVerticalモードのみ
- 10秒 — AttenuateのHorizontal、または2DのReplaceモード
- 4秒 — Pattern、Partials + Noiseモード
- 選択範囲が長い場合、然るべきモードが自動的に選択されて処理されます。
クリック除去処理の代用としてのスペクトラル修復
時間範囲選択で使用すると、クリック除去と比較すると、より破損部分がより長い状況(約10ms以上)でより高い品質を提供します。
スペクトラル修復の使用例
時間/周波数、投げ縄、ブラシ、あるいは魔法の杖で範囲選択をすると、スペクトラル修復は、椅子のきしむ音、咳、落下音、携帯の着信音など、メトロノーム、クリックトラック、扉がバタンと閉まる音、笑い声、鼻をすする音、口笛、げっぷ、喘鳴、録音時に発生したトラブルによるノイズや欠落など、録音された素材から、考えうる全て不必要な音を除去したり減じたりする事ができます。
また、スペクトラル修復は、進化した再合成技術を使用する事により、オーディオに生じたギャップをインテリジェントに補完します。
類似イベント検出ツールを使用して効率化をアップ
不必要とされる箇所はスペクトログラム上に別れたリージョンとして存在する事があります。
その場合、時として範囲選択を大きく取るよりは、それら一つ一つを個別に修復する方がより正確な結果に繋がる場合があります。
また、大きなファイル内に小さな修復個所が点在する場合は類似イベント検出ツールを使用すると時間短縮に繋がる事があります。
Compare Settings画面を活用してスペクトラル修復処理を試みる
時として、何通りかの方法やバンド数などをお試し頂く事により、より要望に添った結果が得られる場合があります。ここでは、周波数の高低は品質と直接関係するわけではありません!設定比較画面をご使用の上、手がけている作品に合った設定を見つけ出して頂く事をお勧めします。
リージョン周囲の長さと比重箇所の前後を調整して完璧な処理を実現
リージョン周囲の長さスペクトラル修復に対し、望ましい信号を判断させる上で選択範囲周辺のどこまでの範囲を検索させるかを設定する“Surrounding region length(リージョン周囲の長さ)”は使用頻度の高いパラメーターの一つです。”Before/after weighting(比重箇所の前後)”は、補間を適用する箇所の前後どちらに比重を置くかを決定します。例えば、不必要な箇所がトランジエント(ドラムの打撃音など)の直前にある場合は、ここの設定をより前方にするとより良い結果が得られます。