Resample(再サンプル)[STD & ADV]
概要
再サンプルモジュールにより、オーディオファイルのサンプルレート変換が可能となります。
サンプルレート変換(SRC)は素材をスタジオ品質の192kHzからCD品質の44.1kHzへサンプルレートを変換する際などに不可欠となる作業です。
録音や編集を行う際は、高周波数帯の描写をクリアにするため高めのサンプルレートを使用するのが一般的です。例えば、192kHzのサンプルレートであれば96kHzまでを再現する事ができ、44.1kHzであれば最高周波数は22.05kHzとなり、これはナイキスト周波数として知られています。
サンプルレートをより低い数値へ変換する場合は、変換後の低いサンプルレートでは再現されない高周波数域の削除が必須となります。この周波数帯を除去しないとエイリアスの発生を招く事になります。エイリアスが発生すると、不可聴範囲の周波数が可聴範囲に紛れ込み、ノイズやディストーションの原因となります。iZotopeのSRCには急峻なローパスフィルターが組み込まれているので、必要な周波数帯を留めつつ、エイリアスの原因を除去する事ができます。
リンク: iZotopeのSRC処理との比較
- iZotopeのSRC処理と他のサンプルレート変換の比較はhttp://src.infinitewave.ca/にてご覧頂けます。
操作項目

赤いエイリアス曲線表示について
- エイリアスの対象となる部分は赤線で表示され、これはダウンサンプリングの場合もアップサンプリングの場合も同様です。
New sampling rate(新規サンプルレート)
変換後のサンプルレートを選択します。サンプルレートをドロップダウンのリストより選択するか、フィールド内をクリックして手動で入力してください。
Change tag only(タグのみ変更)
ファイルの再サンプルをせずに、ファイルプロパティのサンプルレートを宣告された値に変更します。これによりファイルの再生レートとピッチが変化します。
このオプションを使用する状況は
- この機能は、以前のオーディオ編集処理によりサンプルレートのタグが破損し、ファイルが誤った形で再生される場合などに便利です。
Filter steepness(フィルター傾斜度)
SRCフィルターのカットオフの急峻さを操作します。白線で理想的なフィルターを表示します。SRCフィルターのカットオフの急峻さを操作します。白線で理想的なフィルターを表示します。
フィルター傾斜度の数値が高い場合
- フィルター傾斜の値が高いとフィルターの周波数パフォーマンスは向上します。広いパスバンドが使用可能な信号を保持し、頑強なストップバンド減衰がエイリアスの排除を向上させます。しかし同時に高い周波数特性の傾斜度はより長いフィルターを必要とする為、時間領域でリンギングを誘発するほか、カットオフ周波数付近緒レベルの不鮮明さに繋がる事があります。
Cutoff shift(カットオフシフト)
SRCフィルターがカットオフする周波数を決定します。
パスバンドの幅とエイリアスのバランスをとる上で、フィルターのカットオフ周波数の上下を可能にします。
Pre-ringing(プリリンギング)
時間軸上のSRCフィルタープリリング値(0で位相最小、1でリニア位相)。
フィルターの位相特性を調整し、時間領域でのリンギングの特性に影響を与えます。最小限の位相フィルターとなる0に設定すると、プリリンギングは皆無となりますが、ポストリンギングは最大となります。ここの値を1に設定すると。シンメトリーな位相特性を持つリニア位相フィルターが選択されます。この場合、プリリンギングとポストリンギングの量は同等となります。0と1の中間の値はインターミディエイト位相フィルターと呼ばれ、広域の周波数帯に渡る形でリニア位相フィルターが維持される中でリンギングのバランスが保たれます。
Post-limiter(ポストリミッター)
0dbFS以下の出力信号に対するクリップ防止を施します。
ポストリミッターを使用する状況
- 再サンプル中のフィルター使用はピークレベルを変えるため、これは0 dBFS付近の信号を再サンプルする際に重要なオプションです。
- 出力レベルを制限し、信号にクリップが発生しないようにする際は、ポストリミッターを使用します。