De-reverb(リバーブ除去)
モジュール&プラグイン
概要
リバーブ除去機能は録音された音の空間の量を調節します。大聖堂のような空間音を小さいホールでの空間音に変えること もできますし、空間的なボーカル録音もモニター・ルームで録音されたような音に変えることができます。
リバーブ除去機能では信号にある反響音/ダイレクト(ウェット/ドライとも呼びます)の比率に応じてオーディオの処理を 行います。モジュールにより周波数とディケイ時間の推奨設定を分析することも、自分で設定することも可能です。
操作項目

- LEARN(分析): 信号内のリバーブの量を分析します。
- 分析機能により信号が分析され、信号の周波数ごとのウェット/ドライの比率と、リバーブのディケイの全体比率も設 定します。
- 分析動作が完了すると、“Reverb Profile"と"Tail Length"の項目が推奨値に設定されます。
- 分析はどのような残響を持つオーディオにも対応します。
推奨の使用方法
分析機能はノイズ・フロア(またはルーム・トーン)から始まり、ダイレクト信号と残響音が入る数秒間の範囲を選択 して使用することを強く推奨します。
- メーター
- 上部のメーターは再生してから過去5秒間の入出力のレベルの差異を表示します。
- 下部のメーターは経時的なリバーブの減少量を表します。これは入出力との違いを水平の線で表示しています。
- この2つのメーターによりリバーブ除去機能が検知したリバーブが確認でき、設定の精度を高めるのに役立ちます。
- REDUCTION(減少量) リバーブ除去の処理量を設定します。
- この設定を大きくするとリバーブ除去の処理量は大きくなります。
- この設定を小さくすると処理量は小さくなります。
- この項目では処理上ターゲットとなるウェット/ドライ比率を設定します。この設定を高くすれば、信号のリバーブ量
が多い判断され、より強い処理が適用されます。
メモ:負の減少量の値
減少量が負の値の場合信号のリバーブ量が大きくなります。
- REVERB PROFILE(リバーブ・プロファイル): 帯域ごとに適用するリバーブ除去量を設定します。
- 分析機能を使用すると自動的に設定されます。
- 信号内の特定の帯域にリバーブ音が顕著にあらわれる場合、その帯域の数値を上げてください。
- 通常、この設定項目は元来信号内に存在したリバーブと一致する形で設定するのが適切であると言えます。例えば、特 定の帯域でリバーブのディケイが長く(または大きく)持続する場合、その帯域の数値を上げるとより良い効果が期待 できます。
- この操作項目は信号内の顕著なリンギングやレゾナンスなどにも効果を発揮します。例えば 低音域のプロファイル の値を上げると、ベースの弦のレゾナンスのような籠った音色を除去する事ができ、高音域のプロファイルの値を上げ ると、ライブ・ボーカル録音における歯擦音のリンギングを除去する事ができます。
- TAIL LENGTH(減衰箇所の長さ) リバーブ除去のディケイを設定します。この操作項目は残響音の信号の振幅が
-60dBまで減少するまでにかかる時間比率、RT-60の近似値です。分析機能を使用すると自動的に設定されます。
- 処理後にもリバーブ減衰箇所が出てきてしまう場合や初期反響が顕著な場合、設定を上げて ください。
- リバーブ減衰箇所がやノイズ・フロアの音が過剰に処理されたり、処理された音が濁ってしまう場合は設定を下げて ください。
- 初期反響を処理するには設定を最低値にするのが効果的です。
- ARTIFACT SMOOTHING(アーティファクト平滑化): リバーブ除去の周波数精度を設定します。
アーティファクト平滑化のデフォルト値
通常、リバーブは周波数スペクトル全体にわたって平滑であるため、この項目のデフォルト値は高く設定されています。 しかしながら、空間特有のレゾナンスの音 の問題をより高い精度で対処したい場合は、この項目を下げてください。 通常であれば強い処理をかけるとアーティファクトを生み出す恐れがあるため、“Reduction”(減少量)との調整してバ ランスを整えると良いでしょう。
- ENHANCE DRY SIGNAL(ドライ信号の強調): ダイレクト信号のレベルを上げます。
- ダイレクト信号をブーストして信号のダイナミック・レンジを広げ、声やトランジェントの処理を試すのに最適です。
- この設定を有効化することで、のちにノイズ除去を行うのにも役立ちます。
- OUTPUT REVERB ONLY(リバーブのみ出力): 処理された信号からウェットのリバーブ信号の出力のみ行います。
- これは処理がうまく機能しているかを確認するのに役立ちます。リバーブのみを聞くことで減少量、リバーブ・プロ ファイル、減衰箇所の長さ、アーティファクト平滑化といった設定項目の影響を理解するのに便利です。
- この設定が有効のときの出力は、録音されたリバーブの音がより強調される形で、原音と処理後の音の違いとして再生 されるため、通常のリバーブの音のように聞こえない場合があります。
より詳しい情報
初期反響とは
初期反響とは最も近い面から生じたダイレクト音のエコーのことです。強い音のエネルギーでありながら消滅までの時間が 短いため、リバーブの減衰箇所とは分けて考えられます。初期反響は通常、リバーブの減衰箇所の、最初の5msから100msの 部分に含まれます。
リバーブ除去をリアル・タイムで使用する
- リバーブ除去機能はVST/AU/RTAS/AAXといったリアル・タイムで動作するプラグインとして利用できます。
- しかしながら処理が複雑であることから、リソースを占有してしまう恐れがあります。
- 最良の結果を得るために、一旦RXオーディオ・エディターに問題のオーディオを取り込み(RX Connect経由、または直接 ファイルを開く)、リバーブ除去を適用して、そのファイルを元のセッションへ戻すことをお勧めします。
ヒント:リバーブ・プロファイルの分析

- 信号に対する設定を迅速かつ最適に得るには、ノイズから始まる、ダイレクト音とリバーブの減衰箇所の両方がある箇
所、約5秒間を選択してください。
- 分析機能を利用するときにリバーブ除去機能の信号追跡メーターを十分に満たすダイレクト信号とリバーブの減衰箇所 を見つけることができれば、良いリバーブ・プロファイルを得ることができるでしょう。
- ダイレクト音、リバーブの減衰箇所、ノイズはすべて、リバーブ除去機能がオーディオを分析し、適切な設定を行うのに 有効です。ドライ信号とリバーブ信号の比率を分析するには、リバーブの残響箇所の長さと信号のノイズ・フロアの位置 が重要です。(これにより過剰な処理を防止します)
- 分析機能でもし良い結果を得るのが難しい場合は、以下のことをお試しください。
- ドラム、クラップ、咳のようなトランジェントのある広い周波数帯域の音声を分析します。
- リバーブの強い、任意のオーディオを分析します。
- より長めに分析を行います。ほとんどのリバーブは数秒で分析できますが、リバーブ・プロファイルによっては分析に 最大10秒まで必要になる場合があります。
- リバーブ除去された音が自然でない場合
- 分析後、リバーブ除去後の出力が自然でない場合、減少量の設定を下げてみてください。
リバーブ除去処理の画像で見る例
リバーブ除去機能には、時間に応じて信号をシャープする効果があり、スペクトルでこの変化が確認できます。リバーブ成
分があるとオーディオはぼやけ気味に表示され、それらを取り除くとオーディオはきれいに表示されます。上図は、離れた
からの読み上げ音声(左)、その減衰部分を長く処理したもの(中央)、そしてリバーブ除去により初期反響を除去し減退
部分を縮めた画像(右)をまとめたものです。
ヒント:複雑なリバーブの対処
明確な初期反射を含むような非常に複雑なオーディオへの対処が必要場合、以下のリバーブ除去の方法を流れを試すことで 良い結果が得られるかもしれません。
- まず、長いリバーブの減衰箇所に対する適正な減少値を割り出します。
- 処理後、新しいリバーブ・プロファイルの分析を始め、初期反射のレベルを下げてみてください。リバーブ減衰箇所の 設定を0.5へ、アーティファクト平滑化をおよそ3.0へ、そして減少値設定を上げます。
- リバーブ除去とSpectral De-noise(スペクトル・ノイズ除去)を組み合わせれば、リバーブ の非常に多い信号の処理に大きな効果を得られる場合があります。処理の順番は問いません。
代替モジュール
ダイアログに特化したリバーブ除去の処理は、RX 9 Advancedに搭載されているDialogue De-reverb(ダイアログのリバー ブ除去)のモジュールをお試しください