De-clip(クリップ除去)
モジュール&プラグイン
概要
クリップ除去機能はA/Dコンバーターへの入力過多、または磁気テープのサチュレーションなどによって生じるデジタルや アナログのクリップ・ノイズを修復します。これはライブやインタビューなど再録のできない完全に一発録りの音声で生じ たクリップの修復を行う際に非常に便利です。クリップ除去は設定されたスレッショルドを越えた信号を処理し、波形を曲 線的に修正します。一般的には、この処理方法は目視で修復したいクリップ箇所を見つけるのと同じぐらい簡単です。信号 がクリップするわずか下のレベルにスレッショルドを設定することで修正を可能とします。
操作項目

- HISTOGRAM METER(ヒストグラム・メーター): 選択範囲内の波形レベルをヒストグラムで表示します。ヒストグラ ム・メーターを使えば波形のピークが集中した箇所にスレッショルドを設定することができます。これは通常、ファイル にあるクリップのレベルを表します。ヒストグラムにある線が長いほど、その振幅において音が強いことを表します。
- HISTOGRAM ZOOM CONTROLS(ヒストグラムの拡大操作) 信号をより細かく確認したい場合はヒストグラムのスケール
を変更できます。(+)と(-)ボタンを使うとクリップ除去モジュールの解像度を変更します。これらのボタンはヒストグラ
ムとスレッショルド・スライダーの幅を変更します。クリップ箇所がヒストグラムに表示されたところよりも低い場合、
あるいは何も見えない場合にはヒストグラムの表示を拡大すると良いでしょう。
メモ:ヒストグラムのリアルタイム表示におけるアプリケーションとクリップ除去の比較
- **RXオーディオエディターではヒストグラム・メーターは選択範囲に対応してリアルタイム表示されます。**クリップの 顕著な録音箇所を範囲選択すると、クリップ除去機能が音声ファイルのレベルを分析します。一般的に、クリップが選択 範囲内に存在する場合、ヒストグラム・メーター全体に水平線として表示されます。
- クリップ除去プラグインのメーターはヒストグラムをリアルタイムで表示します。
ヒストグラムとは
- ヒストグラムは特定の信号レベルと時間に対するサンプル数を表す分析ツールです。ヒストグラムにある線が長いほど、 その振幅において音が強いことを表します。
- 波形の上端と下端で音が集中している場合は、信号はクリップしているか、あるいは歪んでいるといえます。
- THRESHOLD(スレッショルド)[dB]: クリップを検知する際のスレッショルドを設定します。通常は、クリップの実
レベルよりわずかに低い値に設定するべきです。スレッショルドを設定するには、ヒストグラム上でクリップが集中する
部分のわずか下までスレッショルド・スライダーを動かしてください。
スレッショルド操作中のオーバーレイ(線の重なり)について
クリッピング・スレッショルドを調整すると、ヒストグラム内に青い線が、そして波形上にはグレーの線が表示されま す。(クリップ除去の効果がオーバーレイしたとき)これらの線は、クリップ除去アルゴリズムによってオーディオ情報 が"クリップ"していると識別されていることを意味します。
スペクトル/波形表示上のクリップ除去スレッショルドのオーバーレイを使うには
- デフォルト時、“Declipper Threshold"は"View"メニューの"Effect Overlays"で有効化されています。“De-clip Threshold"を有効にするにはView > Effect Overlay のメニューに進みます。
- 機能が有効な状態でクリップ除去モジュールを開くと、クリップ除去スレッショルドのオーバーレイがスペクトル/波形 表示上に表示されます。
- スペクトル画面上のスレッショルドのオーバーレイの線を操作することにより、クリップ除去スレッショルドを調整する ことができます。
- 波形の振幅目盛の上でマウス・ホイールを使うとスレッショルドの値を調整できます。
- THRESHOLD LINK(スレッショルド・リンク): 波形の正の側と負の側にあるクリップのスレッショルドをそれぞれ
個別に操作する機能に切り替えます。
- この機能が有効だと、正の側と負の側のクリップ・スレッショルドの操作を個別に行うことができます。これはどちら か片側にクリップが偏っている場合に便利です。
- また、波形画面のスレッショルド・コントロールの間にあるチェーンのマークをクリックして切り替えもできます。
- SUGGEST(推奨値): 選択範囲のレベルをもとに推奨のスレッショルド値を計算します。
- QUALITY(品質): 修正処理の品質設定を操作します。クリップ除去モジュールには3つの品質モードがあります。
Low(低)、Medium(中)、High(高)
メモ:クリップ除去の品質モード
- “Low"の品質モードは処理速度がとても速くなります。
- “High"の品質モードは処理速度は遅いものの、精度が高まります。
- 多くの場合は"Low"の品質モードでも十分な結果が得られます。時間の節約のために、はじめは"Low"での処理から試して みてください。比較機能を使ってそれぞれのモードによる複数の結果の確認を行うことができます。
- MAKEUP GAIN(メイクアップ・ゲイン)[dB]: クリップ除去後に適用されるゲインを設定します。
メイクアップ・ゲインの使い方
クリップ除去処理によりピーク・レベルが高くなります。メイクアップ・ゲインを操作すれば除去処理後に発生する信号 のクリップを防ぐことができます。また、処理されていない選択範囲外の音声のレベルと一致させるためにも役立ちま す。
- POST-LIMITER(ポスト・リミッター) ピーク・リミッターを適用して処理後の音声レベルを0dBFSから超えないよう
します。
- たいていの場合、クリップ除去はクリップ箇所より"上"の信号を修正してレベルを増加させるため、0dBFSより上に ヘッド・ルームがないと信号がまたクリップしてしまう事があります。
- ポスト・リミッターが無効の場合、ファイルが32ビット・フローとで保存されている限り、メイクアップ・ゲインがな くても修正箇所の0dBFSより上の信号は正常に保たれます。ただし、デジタル/アナログ変換を通じて音声再生時にその 箇所はクリップします。
より詳しい情報
激しいディストーションへの対処方法
- 状況によっては、Deconstruct(分解)モジュールを使ってディストーションのノイズ成分を抽出する と、波形内でクリップしたピーク以外の付加ノイズを除去するのに役立ちます。
- スペクトル上に激しいディストーションが確認できる場合、Spectral Repair(スペクトル修復) ツールを使って問題となっている箇所を選択し、ノイズを減衰またはディストーションしていない音声と入れ替えること ができます。
画像で見る例
クリップ修復の使用前/使用後
これらは、クリップ修復を実行する前と後の波形です。使用後(下図)の波形には、修復された波形(細い線)と、リミッ
ター処理後の波形(明るい実線)が表示されます。
非リンクのスレッショルド操作による非対称クリップの除去
ここでは、問題のある波形(灰色)を正の側のみ、−13 dB周辺で削っています。(右側のヒストグラムで正の側のみクリッ プが生じていることがわかります)。ここでは負の側の処理は不要のため、スレッショルドのリンクを外し、正の側にの み、−13 dBFS以上の信号へ処理を実行します。処理後の波形はグレーのピーク線の上に青い線で表示されます。
