Time & Pitch(時間とピッチ)[STD & ADV]
概要
Time & PitchはiZotopeの洗練されたRadius™アルゴリズムを用いたモジュールであり、オーディオの尺とピッチを個別の操作する事ができます。これは、オーディオをミックスに合致させる、あるいはBPMやタイムコードの変化に合わせてオーディオの尺を調整するのに便利なツールです。
Pitch Contourモジュール
- Pitch Contourモジュールは時間軸に対するピッチ修正を可能とする為、迅速なピッチシフト向きと言えます。
iZotope Radius
iZotope RadiusはiZotopeのオフライン・タイム・ストレッチとピッチシフトのアルゴリズムであり、とても簡単に使用できる設計はどのような素材もソースとして使用可能です。Radiusは選択範囲に対して修復を適用するRXにあって、ワールドクラス品質のタイムストレッチとピッチシフトを可能にすると共に、オーディオ修復に対するパワフルなツールやアルゴリズムの配列を築きます。
操作項目
ALGORITHM(アルゴリズム)
Algorithmドロップダウンメニューには三通りのプションが用意されています:
- RADIUS: 二つ以上の楽器のミックスなどのポリフォニックな素材や、ドラムループやリズム的なオーディオなど非ハーモニクス的素材に適しています。
- SOLO INSTRUMENT: 弦楽器や人の声など、モノフォニックな素材に適しています。
- RADIUS RT: 高品質かつポリフォニックでRadiusよりも迅速です。
ピッチが明確な単一の楽器を処理する場合はソロモードの使用が最適です。人の声などはソロモードに適しているといえ、その他にも弦楽器、金管楽器、及び木管楽器も適しています。その他の大多数のマテリアルについてはRadiusモードが通常は良い結果に繋がるといえます。 作業に迅速性が問われる場合はRadius RTモードをご使用ください。
SOLO(ソロ)
Soloモードでは、分析された画面サイズがRadiusの出力に大きく影響を与える事があります。
- 分析された画面サイズ小さすぎると、オーディオのピッチが急激に変化するようなきしりノイズが発生します。
- 分析された画面サイズが大きすぎると、音の粒状性が高まり、音の一部が繰り返されているように聞こえます。
- デフォルト値の37 msから始めて頂くと良いでしょう。処理の結果が思わしくない場合は、きしりノイズがなくなるまで画面サイズを上げてください。それでもディストーションが消滅しない場合はMixモードに切り替えて処理を行ってください。
- 低いピッチの楽器や声音を扱う際は、デフォルトの分析画面サイズよりも大きく設定する必要があるかもしれませんが、ここの値が大きいと一部のオーディオが繰り返し再生される場合があります。
Formant Correction(フォルマント修正)
フォルマントとは声音の共鳴周波数コンポーネントであり、性別や年齢などの特徴に深く関わりのある要素です。Shift Formantsを有効にすると、ピッチと時間とは切り離した状態でフォルマントを変更する事ができます。
- Formant Shift Strengthは1.0(最大値)に、そしてFormant Shift Semitonesは0にしておくのが一般的です。
- オーディオにEQ調整のような音が聞こえる場合は、ここの値を低くすると、そうした人口音が軽減されます。
- 声音の性別を変えるなど、特別効果として使用する場合は、セミトーンを0以外の数値にする方が良い効果が期待できます。
STRETCH RATIO(伸張比率)
処理後のオーディオが時間に対してどれくらいストレッチされるかを決定します。
- ここの値が0-100%であればオーディオはピッチに変化がないまま速度だけ速まり、処理後のファイルは尺が短くなります。
- ここの値が100-800%であれば、オーディオはピッチに変化がないまま速度だけ遅くなり、処理後のファイルは尺が長くなります。
BPM CALCULATOR(BPM計算機)
Radiusを使ってテンポ変更を行う場合は、伸縮比率をBPM Calculatorで調節する事ができます。
PITCH SHIFT(ピッチシフト)
オーディオに対して施すピッチシフトの高低の度合いを調節します。
TRANSIENT SENSITIVITY(トランジエント感度)
トランジエント素材に対するアルゴリズムを決定します。ここの設定値が高いと処理後のトランジエントの保存状態がより良くなります。
- 打楽器の素材を扱う際は、トランジエント感度はデフォルト値の1で使用するのが最も一般的です。
オーディオのトランジエントが不鮮明な場合は2以上に設定すると、トランジエントは明瞭さを取り戻しますが、引き換えに非トランジエント素材に対し不必要な処理が施される可能性があります。 - バイオリンやチェロのような弦楽器は、特にMixモードで設定されたトランジエント感度に大きく影響されます。もし、吃音のような人工音ノイズが聞こえる場合は、トランジエント感度を下げてこれを回避してください。
NOISE GENERATION(ノイズ生成:Radiusモードのみ)
ノイズの多い素材を処理した際に不自然な音像になってしまう部分を補います。
- この機能は信号に存在するノイズをストレッチする代わりに、ノイズを発生させます。ここの設定値が高いと、Radiusは頻繁にノイズを発せさせますが、代わりに位相の整合性が損なわれやすくなります。
PITCH COHERENCE(ピッチ整合性:Radiusモードのみ)
処理後のオーディオに留める音色の自然さを調節します。
- RadiusコントロールパネルにあるPitch coherenceは、声音、サックス、あるいはボーカルのような単一ボイス的な音色の保全に便利な機能です。伝統的なボコーダーがこうした信号の位相をランダム化する一方、Radiusにあるこのパラメーターはこうした信号の位相の一貫性を保持します。
- この設定値が高いとRadiusの出力に際して位相的な問題を避けられる反目、処理されるポリフォニック録音素材に粗さが認められる可能性があります。
- 単一のボイスあるいは類似する楽器の処理を行う際は、この設定値を上げるとより良い結果に繋がるでしょう。
PHASE COHERENCE(位相整合性: Mixモードのみ)
処理後のオーディオに位相の整合性を保存します。
ここの値が高いほどRadiusの出力の位相の正確性は高まりますが、ポリフォニックなオーディオを処理した場合の粗雑さに繋がる事があります。
ADAPTIVE WINDOW SIZE(画面サイズ: Soloモードのみ) (ms)
Radiusのsoloアルゴリズムの画面サイズをミリ秒単位で調節します。
- この設定値が低すぎると、オーディオのピッチが急速に変化しているような軋りノイズの発生の原因となります。
- この設定値が高すぎると、音像はザラザラとした粒状性が伴ったものとなってしまい、一部分が繰り返し再生されるように聴こえてしまいます。
- 低ピッチの楽器や声音を加工する際に問題が発生する場合はここの値を上げてみてください。
SHIFT FORMANTS(フォルマント調節)
他のピッチや時間処理とは独立してフォルマント周波数の処理を行います。
- このオプションが有効の場合、Radiusが実行する他のピッチシフトとは独立してフォルマント周波数を変更することができます。
- Radiusでピッチシフトを行う際に、フォルマント調節を行わないと、他のオーディオと共に共鳴周波数も動かされてしまいます。
STRENGTH(強さ)
フォルマント調節フィルターの振幅の強さを調節します。
SHIFT(シフト)
微調整されるフォルマント周波数の分量を調節します。フォルマント周波数を動かさない場合は0.0に設定します。フォルマント周波数を動かしてアルゴリズムを改める際はここのスライダーで微調整を施します。また、特殊効果などにも有効です。
WIDTH(帯域幅)
フォルマント検知フィルターの帯域幅を調整します。
- 数値が低いほど、処理後のオーディオのフォルマント調整の精度が高まります。
- 数値が高いと、フォルマント周波数の帯域が広がります。
更なる情報
単一の楽器(特にベース)のピッチ調整を行う際は、フォルマントの微調整を実行すると処理された音像が向上します。これを行う際は、フォルマント調整を有効にし、設定値を0.1から0.2にしてください、その上で、フォルマント調整のセミトーンをピッチ調整の分だけ動かします。例えば、ピッチを+4セミトーン変更する場合は、フォルマント調整のセミトーンを2から3に設定します。これを実行する事により、オリジナルの素材にあった微妙な打楽器的要素が音像に引き戻されます。
人間の声音に含まれるフォルマント周波数は歌声の中で微妙にシフトします。この場合も、フォルマント調整セミトーンを使う事によって補正できます。例えば、声音のピッチを+7セミトーン変更する場合、フォルマント調整のセミトーンを0から+2に設定すると自然な音像の実現に繋がります。