アシスタント機能 (Assistant)
概要
Neutron 4のアシスタントはユーザーが自身のクリエイティブなアイデアをミックスの中の個々の要素に適用し、自信を持ってミックスを完成させられるようサポートします。このアシスタントでは、Assistant ViewとDetailed Viewと組み合わせることで、大まかな調整をワークフローの初段で済ませてしまい、後から微調整を行うことが出来ます。個別のトラックにNeutronのマザーシッププラグインのアシスタントをお使い頂くか、Visual Mixerプラグインでプロジェクト全体の音量バランスのスタート地点を作って頂くことを推奨します。
アシスタント: Neutronマザーシッププラグイン
Neutronマザーシッププラグインのアシスタントでは合理的なコントロールと視覚的な補助によってミキシングのワークフローの初期段階で大まかな音作りと調整が行えるため、求める結果に素早く辿り着くことが出来ます。
Neutronマザーシッププラグインで推奨されるアシスタントのワークフロー
Neutronのヘッダにあるアシスタントボタンをクリックするとアシスタントが起動します。

アシスタントが入力信号の解析を行い、そのトラックに適したミキシングのスタート地点を生成します。解析が終わるとAssistant Viewが開きます。

Assistant Viewは、モジュールチェインに並んだモジュールへの詳細設定をリアルタイムに行うことの出来る画面です。
Assistant Viewのインターフェース
次の図はAssistant Viewの主要なセクションを表しています。

インテントコントロール(ユーザーの意図をNeutronに伝える操作項目)
インテントコントロールはミキシングワークフローの初期段階において大雑把な調整を行うためのパラメータ群です。トーナルバランス、ダイナミクス、キャラクターとステレオ幅を幅広く設定することが出来ます。インテントコントロールはNeutronマザーシッププラグインのAssistant Viewでのみ使うことが出来、他のコンポーネントプラグインやVisual Mixerプラグインで使うことは出来ません。
インテントコントロールには次のセクションがあります。
インテントコントロールはマザーシッププラグインのDetailed Viewの中の詳細設定項目とリンクしています。次の表はどのインテントコントロールがDetailed Viewのどの項目とリンクしているかを表しています。
インテントコントロール | パラメータ | 対応するモジュールのコントロール | 対応するモジュール |
---|---|---|---|
Tone | Match | Assistant Pre-EQ | Sculptor |
Tone | Match | Amount | Sculptor |
Punch | Amount | Punch Amount | Compressor 2 |
Punch | Attack | Punch Attack | Compressor 2 |
Punch | Sustain | Punch Sustain | Compressor 2 |
Distort | Drive | Drive | Exciter |
Distort | 処理モード (Classic/Trash) | 処理モード (Classic/Trash) | Exciter |
Distort | XYパッド | XYパッド | Exciter |
Distort | Tone | Tone | Exciter |
Width | Width | Width | Global 入出力 |
Tone Match(トーンマッチ)
入力信号にかかる静的なマッチングEQとSculptorモジュールの処理の強さを調節します。

Tone Matchスライダーは Sculptor モジュールの Assistant Pre-EQ と Amount を同時に制御します。この2つのコントロールが作用して入力信号のトーンを選択したターゲットやTarget Libraryの中のカスタムリファレンスのカーブへと近づけます。
アシスタントのPre-EQはマザーシッププラグインのみの機能です
アシスタントのPre EQパラメータはアシスタントを使用した時にのみ有効で、Sculptorコンポーネントプラグインで使うことは出来ません。
Punch(パンチ)

- Amount: AmoutパラメータでCompressor 2モジュールのパンチの量を調節出来ます。Amountはダイナミクス処理を制御するための単一パラメータで、これを使って音楽的なヒット音のダイナミックレンジを広げたり狭めたりすることが出来ます。100%より小さい設定にするとダイナミックレンジを狭め、一定のコンプレッションを生み出します。100%を超えるセッティングにするとダイナミックレンジを広げ、パンチのあるサウンドを生み出します。
- Attack: PunchモードにセットされたCompressor 2モジュールのAttackパラメータを制御します。Attackはパンチ処理のアタックの立ち上がりをコントロールでき、低く設定すると音楽的なヒット音のパンチを強調し、高く設定するとパンチを弱めます。
- Sustain: Punchモードに設定されたCompressor 2モジュールのSustainのパラメータを制御します。パンチ処理の復帰の度合いをコントロールでき、低く設定すると音楽的なヒット音のパンチを鋭くし、高く設定するとリリースを伸ばすことができます。
- 有効化/無効化: モジュールチェイン内のCompressor 2モジュールのオン/オフ状態を切り替えます。これを用いてダイナミクスのパンチ処理をバイパスすることが出来ます。
Punch Intent controls only affect Compressor 2
PunchのインテントコントロールはCompressor 2モジュールのみと連動し、Compressor 1の処理には影響を及ぼしません。
Learn more about the Compressor
ダイナミクス処理に関する詳細はCompressorの章をご参照下さい。
Distort(歪み)

- Drive: Exciterモジュールの全バンドのDriveパラメータを制御します。これは入力信号に加わる歪みの量に影響します。
- 処理モード: Exciterモジュールの3バンド全ての処理モードを制御します。Exciterモジュールの処理モードでは、さりげない歪みと劇的な倍音付与を帯域ごとに切り替えることができます。Classic処理モード(上ボタン)は4つのさりげない倍音付与に、Trash処理モード(下ボタン)では4つの劇的なディストーションを加えたい時にお使い下さい。
- XYパッド: Exciterモードの3バンド全てのXYパッドの動きを制御します。異なる倍音構造を混ぜ合わせることで、お好みのサウンドに仕上げることができます。
- Tone: ExciterモジュールのToneを制御することが出来ます。ToneはExciterにおいて低域と高域にそれぞれどのようなバランスで歪みを加えるかを調節することが出来ます。-100から0の時はローの成分を、0から100の時はハイの成分を強調します。
Exciterの詳しい説明について
Neutronにおける倍音付与の詳細についてはExciterの章をご参照下さい。
Width(ステレオ幅)
Neutronマザーシッププラグインの入出力パネルにあるグローバルなWidthの値を制御します。

入出力パネルの詳細
入出力パネルの詳細についてはGeneral Controlsの章をご参照下さい。
Target Library(ターゲットライブラリ)
Target Libraryには楽器ごとのターゲットプリセットとユーザーが作成したリファレンスターゲットが含まれます。ターゲットを設定するとAssistant ViewやDetailed Viewのシグナルチェインの中のモジュールの設定が音作りのスタート地点として好ましい状態に切り替わります。

楽器ごとのターゲット
トーナルバランスターゲットはDetailed ViewのSculptorモジュールと直結しており、アシスタントでターゲットを切り替えるとSculptorモジュールのターゲットカーブメニュが連動して切り替わります。これにより、入力信号に加わる処理の内容が劇的に変わります。
編集中の状態
Detailed Viewの中で何らかの変更を加えると、ターゲットは編集中の状態(Dirty State)になります。このボタンをクリックすると元の設定に戻ります。
編集中の状態について
ターゲットが編集中の状態(Dirty State)になるということは、アシスタントによる推奨セッティングから外れることを意味します。
リファレンスターゲット
コンピュータからオーディオファイルを読み込むことで、ユーザー自身のリファレンスターゲットを作成することが出来ます。
(+)ボタンをクリックするとシステムダイアログが開くので、オーディオファイルを選択するとTarget Libraryに読み込むことが出来ます。
音素材、クリップ、またはステムを選択すると、そのファイルとファイル名がNeutronのTarget Libraryへとコピーされます。
メーターと表示
トーナルバランスターゲットメーター
トーナルバランスターゲットメーターはオーディオの周波数スペクトラムを表示します。これは選択された楽器ターゲットの意図された特性が出力に対してどの程度異なっているのかを視認するのに便利です。ターゲットを切り替えるとトーナルバランスターゲットメーターの形も連動して切り替わります。
薄い灰色の線はNeutronの出力信号を表しています。Neutronのモジュールチェインを通過することで入力信号がどのように変化したかを視覚的に把握することが出来ます。
Relearn(再解析)
クリックするとNeutron 4のアシスタントの解析をやり直します。
アシスタント: Visual Mixerプラグイン
Visual Mixer内のアシスタントを使うことで、Neutron 4のマザーシップやNeutron 4のコンポーネント、Relayがインサートされた全てのトラックの音量バランスを自動的に設定することが出来ます。最良の結果を得るためには、新しいセッションに処理前のステム(トラック)を読み込んだ直後に使用して下さい。
- アシスタントにはNeutron 4 Visual Mixerプラグインからアクセスすることが出来ます。
- アシスタントは楽曲を解析し以下のIPC対応プラグインの音量をセットします。: Neutron 4 mothership, Neutron 4 Compressor, Neutron 4 Equalizer, Neutron 4 Exciter, Neutron 4 Gate, Neutron 4 Transient Shaper, Neutron 4 Sculptor, Neutron 4 Unmask, Relay。
下の表がVisual Mixerのアシスタントで使うことの出来るプラグインの一覧です。
推奨されるワークフロー: Visual Mixer plug-in
Note: Don't Touch Your Faders
Visual Mixerでアシスタントを動作させる前に、DAWのフェーダーを全て ユニティゲイン に設定することをおすすめします。つまり、DAWのフェーダーを0dBフラットの状態にして触らないようにして下さい。DAWセッションに手を加えていない状態であればあるほどVisual Mixerのアシスタントは効果を発揮します。
もしVisual Mixerのみを使って全てのパンニングとフェーダーをセットする場合はRelayをトラックの最後のスロットにインサートするようにして下さい。
- ミックスに用いる全てのトラックを読み込んで下さい。より多くのトラックを読み込めば、その分アシスタントで時短することが出来ます。
- マスターバスにVisual Mixerプラグインをインサートして下さい。Visual Mixer事態はオーディオにいかなる処理も施すことはありませんが、Visual Mixerと通信した先のプラグインで音量が変動します。
- Visual Mixerのアシスタントボタンをクリックするとアシスタントを使い始めることができます。
Visual Mixerアシスタントの手順
Visual Mixerのアシスタントの動作は次の手順に分かれます。
それぞれの段階において、アシスタントが最良の結果を提案してくれるようにユーザーは何らかのアクションを求められます。
各オーディオ素材に対してプラグインは1つだけ選ぶようにして下さい。
バスと個別トラックは同時に両方使用しないでください。アシスタントはバスとトラックいずれでも使うことが出来ますが、バスまたはトラックのどちらかでのみ 使うようにして下さい。もしNeutron 4とRelayを同じトラックにインサートしている場合、そのトラックではいずれか 一方だけ をアシスタント用に使うようにして下さい。
ヒント: うまくいかない時は
- 個別トラックとバスのいずれか一方のみ を使っているかご確認下さい。アシスタントは 両方 を同時に使うことを想定していません。
- フェーダーを0dBフラットに設定し、パンも全てセンターに合わせてみて下さい。
- セットアップの段階でFocusトラックが的確に選ばれているかを確認して下さい。
- いずれかのトラックまたはバスに複数のiZotopeプラグインがインサートされている場合、セットアップの段階でいずれか1つのみが選ばれていることをご確認下さい。
セットアップ
ミックスの中で主役になるトラック、目立たせたいトラックを選び、 Begin Listening ボタンをクリックします。
この画面にはセッション内にインサートされているIPC対応iZotopeプラグインが全て表示されます。 アシスタントによる解析に含めたいトラックが1度だけ選択されているかを確認して下さい。また、この段階ではまだ音楽を再生しないで下さい!
メモ: 少なくとも1つのトラックをFocusとして選択して下さい。
ミックスの中ではっきりと聴こえさせたいトラックを最低でも1つは選んで下さい。Focusを選ぶまで次の段階に進むことは出来ません。このFocusというのは、ミックスの中で最も重要な情報を持つトラックのことです。Focusはいくつも選ぶことも出来ます。例えば、楽曲の中にリードボーカルが2人いる場合などです。ただし、全てをFocusに選んでしまうとアシスタントで良い結果を得ることは出来ません。
待機
再生ヘッドを楽曲の冒頭に移動させ、再生を開始するとAssistantが楽曲の解析を始めます。

Assistantはユーザーの音楽を聴くまで何もすることが出来ません。アシスタントに聴かせたい音が始まるポイントから再生を開始して下さい。
メモ: アシスタントは既に再生が始まっている場合解析を行いません。
Listeningページに移行した時に既に楽曲の再生を始めてしまっていた場合、アシスタントは楽曲の解析を自動的に行いません。この場合一度再生を停止した後に、楽曲の冒頭から再生し直すことで最も良い結果を得ることが出来ます。大きなセッションでアシスタントを動作させた場合楽曲の再生や巻き戻し、リスタートを行うために若干の遅延が発生するかもしれません。
リスニング
楽曲の最後まで再生が辿り着いたら、Go To Resultsボタンをクリックして結果へと移行して下さい。Go To Resultsをクリックしなければアシスタントは解析を自動的に止めることはありません。
アシスタントは各オーディオ素材のレベルを聴き、それぞれをいくつかの楽器グループへと分類します。
試聴と微調整
アシスタントによる解析と楽器の分類が終わったら以下のことが出来るようになります。
- アシスタントの提案を試聴します。
- グループスライダーを調節して好みのサウンドになるようにします。
- Bypass Assistantボタンをクリックしてアシスタントの提案と元のミックスバランスを比較します。
- グループスライダーとフォーカスの分類を編集します。
グループスライダー
グループスライダーを調節し好みのサウンドに近づけた上で、元の状態との比較を行います。
グループスライダーはアシスタントによる解析に基づいて作られます。アシスタントはユーザーの音楽に関して学習した全ての情報を用いて、楽器の分類ごとにサブミックスを作りグループ化します。
アシスタントは下記のグループに対してそれぞれターゲットレベルを設定します。
- Focus: ユーザーがミックスの中で目立たせるようアシスタントに指示した要素
- Voice: ボーカルが含まれるトラック
- Bass: ベースが含まれるトラック
- Percussion: ドラム/パーカッションが含まれるトラック。
- Musical: 上記のいずれのグループにも属さないその他のトラック。
いずれのグループにも、それぞれに紐付けられたレベルスライダーが存在します。スライダーはそれぞれのグループに対する全体的なゲイン差を表します。これらのスライダーを調節することで、アシスタントが最初に提案したターゲットレベルに対し相対的なレベルの変化を起こすことが出来ます。 アシスタントはグループスライダーでセットされたレベルに到達グループ全体のレベルが到達するように、グループ内のそれぞれのトラックに対しゲインの変化を設定します。 この調整は+/-12dBの範囲で行うことが出来ます。
ヒント: グループスライダーをお好みで設定して下さい。
グループスライダーが初期状態にある時のミックスバランスが好みでなかった場合、それを決して最終的なバランスと捉えずユーザー自身が良いと感じるバランスになるようにグループスライダーを調節して構いません。
グループスライダーの挙動について
グループスライダーはそのグループとして認識されたトラックがなかった場合は無効になります。もし全てのオーディオ素材がFocusに設定された場合、Focusスライダーのみが有効になります。その時、使用されて いない または分類されて いない オーディオ素材は無効になります。
Bypass Assistant(アシスタントのバイパス)
このボタンを押すとスライダーを無効にしアシスタントによる提案の前のオリジナルの状態を聴くことが出来ます。
アシスタントの提案を視聴している際はこの処理前のミックスは処理後のミックスとゲインマッチされるため、バランスの変化に集中して比較することが出来ます。

ヒント: 全体的なレベルは小さくなるかもしれません。
クリッピングを防ぐために、全体的なミックスバランスを作る時に音量を下げるかもしれません。これにより、Mix Assistantの提案するレベルが元のミックスよりも静かになることがあります。
編集
右下の角の Edit Classifications ボタンを押すことでどのトラックがどのカテゴリに分類されているかを変更することが出来ます。Focusに登録されているトラックを変更したり、他のカテゴリへと分類し直すことができます。アシスタントはユーザーによるカテゴリ分類の編集結果をグループに反映します。

メモ: アシスタントのプラグイン編集リスト
セットアップの段階で選択しなかったプラグインはアシスタントのプラグインリストには表示されません。また、いずれのプラグインもそのリストに追加することは出来ません。更に、アシスタントによる学習が行われている 最中に IPCに対応するiZotopeプラグインをセッションに追加したとしても、プラグインのエディターには出てくることはありません。
結果の承認
ミックスの音量バランスに納得出来たら Accept ボタンをクリックするとそれぞれのIPC対応iZotopeプラグインの音量設定が更新されます。
- もしアシスタントの結果が好きになれなかった場合はアシスタントウィンドウを閉じると元の状態に戻ることができます。
- 試聴をしている間は Bypass Assistant を無効にするまでAcceptボタンをクリックすることは出来ません。
ヒント: Visual Mixerにおいて出力ゲインの調整を確認する
アシスタントの影響を受けた全てのプラグインの出力ゲインへの変更はVisual Mixerプラグインの中で見ることができ、これが最もかんたんにゲインの変更を確認する方法です。
メモ: アシスタントを終了するとグループスライダーにはアクセスできなくなります。
アシスタント画面を閉じると、元の画面に戻ってグループのレベルを変更することは出来なくなります。グループの音量を変更するためには再度アシスタントによる解析を最初からやり直さなければなりません。アシスタントはユーザーがカテゴリ分類を上書きしない限り、再度全てを再学習します。