ヒントと用例

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Ozoneのパフォーマンスを最適化するためのヒント

多くのシングルタスクのプラグインとは異なり、Ozone 8は6つのプラグイン分のパワーを使用し、起動時は膨大な数の計算をこなします。複数のDSPモジュールがアナログ模倣を実行し、6本のリアルタイムメーターが表示されるOzoneは、典型的なプラグインを遥かに凌ぐCPU処理を要求します。

オーディオ信号処理の品質を更に向上させながらも、Ozone 8はCPUの最適化に関しても大きな進歩を遂げ、セッションを効果的に運用することが可能となりました。

もし、使用状況がコンピューターの限界に近づいた場合は、以下を実行するとCPUの最適化に繋がることがあります:

  • 処理を行っていないモジュールは信号処理チェーンから除外してください。
  • OzoneのデジタルEQを使用している場合は、最適なパフォーマンスに必要なEQバッファサイズを割り当ててください。詳細はバッファサイズの項をご覧ください。
  • 何れかのマルチバンドモジュールでクロスオーバーの種類をデジタルにしている場合は、オプションメニューでクロスオーバーのバッファサイズを調整してみてください
  • プラグインとして使用する場合は、ホストアプリケーション側でバッファサイズやレーテンシーの設定を変更してみてください。
    • バッファが大きすぎる場合(レーテンシーも大きくなり)、メーターの反応が遅くなり、パフォーマンスに問題をきたすことがあります。
    • バッファが小さい場合(レーテンシーも小さくなりますが)、EQやクロスオーバーによるCPUパワーの消費が嵩みます。
  • オプション画面にてメーターを非表示にして見てください。
  • クロスオーバーのバンド数を減らすとCPUへの負担が劇的に軽減することがあります。例えば、ダイナミクスは全4バンドではなく、1バンドか2バンドで使用してみてください。クロスオーバーのバンド数変更はモジュールの標準的な操作項目の章のマルチバンドモジュールの使用に関する項を参照してください。
  • Ozone 8 Advancedでモジュール使用数が4種類以下の場合は、各モジュールを個別のコンポーネントプラグインとして使用すると、CPUパワーの消費軽減に繋がります。

バッファサイズ

Ozone 8には特定の設定状況での最適なパフォーマンスを実現する進化した操作項目が内蔵されます。Ozoneは内部DSPチェーンに複数のモジュールを内包するため、内部バッファサイズを操作できる場所が複数用意さています。

一般的には、システムによらずデフォルト値で良いパフォーマンスを発揮します。しかしながら、ホストアプリケーションによっては、この限りではありません。この項を参照の上、Ozoneを貴方の使用する特定の設定状況で最適化してください。

個別のモジュールでバッファサイズを設定する

Ozoneのイコライザーは特定のモード下では固定のバッファサイズに設定する必要があります。この限りでない場合、オプションタブにて個別にバッファサイズを設定することができます。ただし、デフォルト値は多くの使用環境に対して好ましい設定になっており、殆どの場合、ここを調整せずともOzoneを恙無く使用することができます。

Ozoneでホストのバッファサイズを判断する

OzoneのBuffer Size Viewerを使用すると、ホストアプリケーションがどのようなバッファをOzoneに送信しているかを判断することができます(Ozoneプラグインのみ該当)。

  • 以下の手順でOzoneのView Buffers画面を開きます:
    • Options -> General -> Host -> View Buffers。ホストアプリケーションにより送信されるバッファサイズを把握した後は、以下をお試しください:
  • 信号処理チェーンにEQモジュールを追加し、その他のモジュールを同じ信号処理チェーンから全て外してください。
  • EQモジュールがデジタルモードに設定されていることを確認します。
  • EQフィルターのサイズを最も頻繁に使用する値にセットします。
  • EQバッファサイズをホストアプリケーションのバッファサイズと最も近い値にセットします(View buffers画面に表示)。
  • CPUメーターを開きます。
    • 多くのホストアプリケーションにはビルトインのCPUメーターがついていますが、Windows機で使用する場合はCtrl+Shift+ESCを押してパフォーマンスタブを選択することでも同様のメーターが使用できます。通常、CPUメーターの精度は高くありませんが、ここではCPU使用率の相対的な変化の確認を目的とします。
  • オーディオファイルを開き、Ozoneを通して再生します(あるいはトラックの出力をOzoneがインサートされたバスに設定します)。
    • ファイルが普段使用する状態(サンプルレート、ビットデプス、チャンネル数など)に近いことを確認してください。
    • 普段、マルチトラック環境でOzoneを使用する場合は、ここでも同様の環境で使用してください。
  • オーディオを再生します。
  • 再生に伴いEQのバッファを変更しながらCPUメーターを観察し、CPU使用率へ良い影響を及ぼしているかどうか確認します。
    • ホストアプリケーションのバッファサイズに近い値が開始点として申し分ありませんが、最適な数値はOzoneのコントロールの効く範疇の外にあるシステムやホストアプリケーションの要素に依存します。
  • この設定により、使用中のセッションのパラメーターに対するOzoneのCPU消費は最適化されます。
  • Ozoneの使用環境を変える場合は(例:44.1 kHzから96 kHzへの変更、あるいは単一トラックからマルチトラック環境へ移行する場合など)、上記の手順を再び実行し、バッファ設定が最適であるかどうかを確認する必要があります。

以上が、音質を犠牲にすることなくOzoneの内蔵DSPを最適化する方法です。これが多種多様な環境でのOzoneの快適な使用に繋がれば幸いです。これらのステップを踏むことにより、我々の操作できる範疇にない、ユーザにより異なる状況への対処が可能となることでしょう。

Ozone 8のマスタリングプリセットを使用する

Ozoneのプリセットは迅速な作業開始を可能とするべく設計されております。

全てのミックスは固有であり、万能なプリセットは存在しません。しかしながら、我々は作業の良好な開始点となり得る幅広いプリセットの作成に努めました。プリセットから作業を開始することで、そのセッションの方向性に合致した微細な設定を実現する手助けとなります。

Ozoneでマスタリングする際の基本的な原理の習得へ向け、Ozoneマスタリングガイドをダウンロードして頂くことをお勧めします。プリセットは沢山ありますが、Ozoneの各マスタリングモジュールの仕組みを把握して頂くことが成功への鍵となります。後悔はさせません。これで貴方のマスターもこれまでにないサウンドを獲得します。

入力レベルの設定

Ozoneで入力レベルを設定すると、Ozoneのダイナミクス系モジュールの作用に大きな違いをもたらします。 また、入力レベルの大小がサウンドに与える影響は大きいため、入力レベルの設定は、プリセットの選定に際して重要となります。


手始めに、Ozoneの入力レベルを使用し、入力信号がメーターの上半分から上四半分に来るよう設定してください。Ozoneのマキシマイザーモジュールが有効化されている場合は、オーディオのクリッピングが防止されますので、入力メーターのピークがトップに近い状態でも構いません。

開始点を選択する

手始めにOzoneのプリセットを幾つか聴き比べます。プリセットは処理後の結果が分かるようにネーミングされています。また、ジャンル別のマスタリングプリセット、あるいは単純に一般目的別のマスタリングプリセットを使用するのも良い開始点といえます。

ミックスはそれぞれ固有のものですので、その状況に合った開始点が見つけられるよう、我々は多くのプリセットを用意しました。その時のミックスに見合ったプリセットを見つけ、その上で微調整を行うと良いでしょう。

ディザーの使用の秘訣

プラグイン版のOzone 8を使用する際のディザーについて:

  • Ozoneでディザー処理を施した信号はそれ以上プロセッシングを行わないでください。Ozoneの出力ゲインスライダーの調整は構いませんが(ディザー前に通過する信号であるため)、ホストアプリケーションやその他のプラグインのレベルは変えないでください。
  • ほぼ全てのホストアプリケーションには、エフェクト位置の後に専用のマスターフェーダーが用意されており、ここでレベル調整を行うと、ディザー処理が破壊されます。
  • Ozoneでディザリングを行う場合は、Ozoneの後にプラグインを使用しないでください。ディザーは最後にオーディオに対する処理を行う物である必要があります。
  • ホストアプリケーションのディザリングはオフにしてください。これは、基本的には、何れにしろゼロであるが故にビットを切り詰めているためです。

Ozoneでのパラメーターの相対リンク作業

Ozoneには関連するパラメーターの数値を相対的にリンクさせるパラメーターリンク機能が備わっています。各パラメーターは、リンクされた時点の数値の相対性が維持されます。

相対リンクの例

  • エキサイターでM/Sモードを有効化
  • Midチャンネルを調整: バンド1のミックスを50%へ
  • Mid/Sideリンクを有効化
  • Sideチャンネルを調整: バンド1のミックスを75%へ
  • この状態でMidチャンネル画面に戻るとバンド1のミックスが25%に変化しています

Mid/Sideプロセッシングの例

EQモジュールでのMidプロセッシングの使用例

  1. EQモジュールでMid/Sideモードを選択した上で“Mid”をクリックし、中央のEQカーブを表示させます。その上で小さく表示された“s”をクリックし、Midチャンネルをソロにします。
  2. この状態でオーディオファイルを再生すると、音像の中央にアサインされたオーディオ信号のみを聴くことができ、通常この位置に置かれるリードボーカルやその他のリード楽器を他から分離してモニターできます。
  3. ここで、1Khz周辺のEQ点を選択し、オレンジのEQ曲線を6dBほど押し上げます。これにより、他の楽器やステレオ分離された全体の周波数帯域に影響を与えることなく、リードボーカルのみを前面に出すことが可能となります。

EQモジュールでのSideプロセッシングの使用例

  1. EQモジュールでMid/Sideモードを選択した上で“Side”をクリックし、サイドのEQカーブを表示させます。その上で小さく表示された“s”をクリックし、Sideチャンネルをソロにします。
+ この状態でオーディオファイルを再生すると、音像の両端にアサインされたオーディオ信号のみを聴くことができ、通常この位置にあるリバーブの終端部分や両端にパンで振られた楽器を他から分離してモニターできます。
  2. ここで、6Khz周辺のEQ点を選択し、青色のEQ曲線を6dBほど押し上げます。この6 kHzに特定した周波数帯域の押し上げは音像の両端にのみ適用されます。この処理は、ステレオ領域の広がりとリッチな音像を実現する効果をもたらします。

エキサイターモジュールでのMid/Sideプロセッシングの使用例

ハーモニックエキサイターモジュールをSideチャンネルで使用の上、ミックスから高い周波数帯を選択します。高周波数帯のスライダーを上昇させることで、Mid(中央)のチャンネルをそのままにした状況で、ミックスに極度のエッジを効かすことができます。

ダイナミックモジュールでのMid/Sideプロセッシングの使用例

ステレオミックスでマルチバンド圧縮を行う際、互いの周波数帯が近すぎるため、特定の楽器やボーカルにのみ処理を適用するのが困難な場合があります。

こうしたケースでは、Mid/Sideプロセッシングを使用すると、特定の周波数帯を中央とサイドに分離し、それぞれ個別に処理を適用することができ、より精度の高いミックスが実現します。

圧縮を施す際、Mid/Sideプロセッシングには多くの使い道があります。例えば、ボーカルは通常ミックスのセンターに位置し、他の楽器はサイドに振られる傾向があるため、ボーカルに掛かるコンプレッションが他の楽器に及ぼす影響を抑えることなどが可能となります。