コンプレッサー
概要
コンプレッサーを使用するとダイナミック・レンジを減少させたり、音量レベルを一定にしたり、ボーカルの音や特性を 形作ることができます。 Nectar 3では 2つ のコンプレッサー・モジュールを Module Chain (モジュール・チェーン) 内に直列に配置することで、様々なボーカル・コンプレッションの設定を可能とします。コンプレッサー・モジュールには処理量、 スピード、特性が調整できるControls(操作項目)とその効果を堅固に視覚化する Meters (メーター)があります。

Controls(操作項目)
コンプレッサー・モジュールの操作項目それぞれが合わさってコンプレッションの特性、処理量、スピードに働きかけ、入 力信号に適用します。コンプレッサー・モジュールには以下の操作項目があります。
- Mode(モード)
- Level Detection Mode(レベル検知モード)
- Threshold(スレッショルド)
- Ratio(レシオ)
- Attack(アタック)
- Release(リリース)
- Makeup Gain(メイクアップ・ゲイン)
- Auto Gain(オート・ゲイン)
Mode(モード)
コンプレッサーの処理アルゴリズムを設定します。Digital(デジタル)、Vintage(ビンテージ)、Optical
(オプティカル) 、 Solid-state(ソリッド・ステート) の4つの独自設定が使用できます。 モードの選択によって
コンプレッションの特性に働きかけるとともに、Ratio(レシオ)、 Attack(アタック)、
Release(リリース)のレンジも設定されます。

以下は、各コンプレッサー・モードでの音波特性と設定範囲をまとめた表です。
モード名 | 説明と設定範囲 |
---|---|
Digital (デジタル) ![]() |
モダン、きわめて正確なコンプレッション。 正確に、最小限の色付けによるリニア圧縮のクリーンな響きを実現します。
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Vintage (ビンテージ) ![]() |
クラシック、アナログのコンプレッション。 プログラム依存のレスポンスと伝統的なアナログ・コンプレッサーの非リニア・リリース特性をエミュレートします。
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Optical (オプティカル) ![]() |
微細な色付けによるなめらかで透明なコンプレッション。 微細な高音域の色付けと伝統的なハードウェア・オプティカル・コンプレッサーのノン・リニアアタック、リリース特性をエミュレートします。
コツ Level Detection Mode(レベル検出モード)を(Peak(ピーク検出)ではなく)RMS(RMS検出)にすれば、より忠実にRMSのレベル検出を使用したオプティカル・コンプレッサーのハードウェアのサウンドをエミュレートできます。 |
Solid-State (ソリッド・ステート) ![]() |
明瞭なサウンド、かつ独自の高音域の色付けによる強いコンプレッション。 非リニア・リリースタイム、速いアタックと、初期のトランジスタベースのハードウェア・コンプレッサーの周波数特性をエミュレートします。ソリッド・ステート・モードはボーカルのトランジェント(音の立ち上がり)を強調するのに役立ちます。
ヒント Level Detection Mode(レベル検出モード)を(RMS(RMS検出)ではなく)Peak(ピーク検出)にすれば、ソリッド・ステート・モードのアルゴリズムによる気持ちの良い高音域の色付け効果を最大限に強調できます。 |
Level Detection Mode(レベル検出モード)
レベル検出モードの選択により、コンプレッサーでの入力レベルの計算方法が変わります。レベル検出モードを変更すれ ば、スレッショルドの判定レベルが変わり、いつまたはどのような頻度で入力レベルのコンプレッション条件を満たすかに 影響します。

コンプレッサーでは Peak(ピーク) と RMS(実効値) の2つのレベル検出モードが選択できます。
- Peak: 入力信号の瞬間ピークレベルからコンプレッサーの入力レベルを設定します。
- RMS: 入力信号の平均レベルからコンプレッサーの入力レベルを設定します。
Threshold(スレッショルド)
コンプレッサーが処理を行う信号レベルを設定します。

入力レベルがスレッショルドのレベルを超えたとき、コンプレッサーが働きます。スレッショルドのレベルを超えた信号は Ratio(レシオ)に応じてレベルが減少します。入力信号がスレッショルドのレベルを超えたとき、ア タックのフェーズが始まります。入力信号がスレッショルドのレベルを下回ったとき、コンプレッサーのリリースのフェー ズが始まります。
ヒント:スレッショルドの調整方法
- スレッショルドのスライダーをクリック、上にドラッグするとスレッショルドを上げ、下にドラッグするとスレッショル ドを下げます。
- スレッショルド値のテキスト表示をクリックすると インライン編集状態になり、数字をキーボードで入力できます。
ヒント:スレッショルド設定時の波形ディスプレイの利用
コンプレッサーのスレッショルドを設定するのにWaveform displays(波形ディスプレイ) が視覚的に役立ちます。
Ratio(レシオ)
Threshold(スレッショルド)を超えた信号のゲインをどの程度減少させるかを設定しま す。レシオが1:1で設定されているとき、信号がスレッショルドを超えてもゲイン・リダクションは発生しません。レシオ 設定が10:1またはそれ以上の値であればコンプレッサーはリミッターとして機能します。リミッターとして機能するレシオ 設定では、出力レベルは一切スレッショルドを超えなくなります。

オプティカル・モードでのレシオ設定
オプティカル・モードが選択されていれば、レシオ設定は4:1に固定されます。
Attack(アタック)
入力信号がスレッショルドを超えたときゲイン・リダクションを適用するまでにかかる時間を調整します。このアタックタ イムはミリセカンド(ms)単位で調整します。

Release(リリース)
入力信号がスレッショルドを下回ったときコンプレッション処理を止めるまでにかかる時間を調整します。このリリースタ イムはミリセカンド(ms)単位で調整し、一般的にはアタック・タイムより長めに設定します。

Makeup Gain(メイクアップ・ゲイン)
コンプレッション後の出力レベルに対して行うゲインの量を設定します。

Auto Gain(オート・ゲイン)
入力信号のレベルに合わせて、コンプレッションされた信号のゲインを自動調整します。

Global Module Controls(グローバル・モジュール・チェーン)
モジュール・チェーンにはBypass(バイパス)、Solo(ソロ)、 Remove(削除)、Reorder(並べ替え)、Wet/Dry Mix (ウェット/ドライ)といった各モジュール共通の操作項目があります。

グローバル・コントロールのチャプター
Nectar 3のモジュール・チェーンとその他のグローバル・コントロールの詳細は、Global Controls(グローバル・コント ロール)のチャプターをご覧ください。
Meters(メーター)
以下のメーターではコンプレッサーがどのように入力信号を処理し、応答しているかを示しています。
- Waveform Displays(波形ディスプレイ)
- Gain Reduction Trace(ゲイン・リダクション追跡)
- Gain Reduction Meter(ゲイン・リダクション・メーター)
Waveform Displays(波形ディスプレイ)
スクロール表示による波形表示メーターはコンプレッション処理前と処理後の信号の振幅を経時変化を表示します。最新の 情報がメーターの右から左へ流れます。

コンプレッション後の出力信号 の波形は 明るい灰色 で、入力信号の波形の前面に表示されます。コンプレッ ション前の入力信号 の波形は 暗い灰色 で、出力信号の波形の後面に表示されます。信号がコンプレッション処理 されると、2つの波形の差からゲイン・リダクションの量を確認することができます。
メモ:出力波形のオート・ゲイン
オート・ゲインによりコンプレッション前と後の信号のレベル差を補正するよう、コンプレッションの処理レベル調整しま す。オート・ゲインがもたらすゲイン変動が出力波形に反映されることにより、入力、出力の波形の差がわかりにくくなる ことがあります。 オート・ゲインが有効化されているときのゲイン・リダクションの経時変化を監視するには Gain Reduction Trace(ゲイン・リダクション追跡) メーターが役に立ちます。
Gain Reduction Trace(ゲイン・リダクション追跡)
黄色い追跡ラインが動作中のコンプレッサーに適用されているゲイン・リダクションを指し示します。追跡ラインが(ア タック、リリース・フェイズの)レスポンス時間とゲイン・リダクションの経時変化の監視に役立ちます。

Gain Reduction Meter(ゲイン・リダクション・メーター)
現在、信号に適用されているゲイン・リダクション量の平均を表示します。このメーターはゲイン・リダクション量をデシ ベル(db)で表示します。
