Neutrinoスペクトラル成形を理解する

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概要

無償のNeutrinoプラグインとNeutron ElementsのI/Oパネルの一部として使用されるNeutrinoのスペクトラル成形アルゴリズムは、使用される全ての個別のトラックに微細な変化を加えることで、ミックス全体のバランスを向上させるために設計されました。洞察力の高いオーディオエンジニアのために作られたNeutrinoは、貴方の秘密兵器となることでしょう。激賞される優れたA/Dコンバーターや、その他の微細な音質向上を生み出す製品がそうであるように、Neutrinoもより良い音質のミックスの探究を手助けするべく生み出されました。

全てのエフェクトがそうであるように、使用過多となることもあり得ますが、スペクトラル成形は、聴いて瞬時に分かる劇的な効果や、単なるラウドさを伴う変化には関心はありません(皮肉なことに、そういう変化はミックスのバランスを崩すものです)。勿論、これの最高で斬新な強みは、ミックスの各トラック上で使用された際にもたらされる滑らかな音的光沢に他なりません。アナログサミングの背景にある方法論と同様、微細な変化による恩恵は、使用するトラックが多いほど、究極的に合算されるプロセッシングも増えて顕著となります。聴覚が優れていれば、難なくこの差を聴き分けることができ、多くのトラックで使用するには、いつどこで使用すればその効力を最大限に活かすことができるか判断することができます。

Neutron Elements Neutrino Modes

スペクトラル成形とは?

スペクトラル成形とは、周波数スペクトラム上のリアルタイムかつダイナミックな調整であり、ダイナミックEQとマルチバンドコンプレッサーの中間に位置します。Neutrinoには心理音響的に分割された多くの周波数帯があり、各帯域にはオーディオ信号のRMSを基に設定される順応スレッシュホルドがあります。より多くの信号がその順応スレッシュホルドを通過するほど、周波数に特化した減衰が適用されることになります。そのため、Neutrinoはピークを超過した周波数をダイナミックに調整する機能を持っており、尚且つ様々なソースに合わせて動作を調節することのできる製品であるといえます。 スペクトラル成形は、従来型のコンプレッサーやイコライザーでは成し得なかった形で、楽器や声のサウンドにバランスをもたらします。トランジエント成形が、波形の時間ドメインのトランジエントの部分のみに焦点を絞ってダイナミック・プロセッシングを適用するのと同じように、スペクトラル成形は、周波数スペクトラム内の特定のエリアにのみ焦点を絞ってダイナミック処理を適用します。これは多くの周波数帯に個別に微小な低レシオ圧縮を加える構造となっており、入力オーディオ信号に応じて、スレッシュホルドを独特の時定数で自動調整します。 マルチバンドコンプレッションのような周波数依存の他のダイナミクスツールと比較すると、スペクトラル成形はスペクトラム上で断然高い解像度を提供することができます。信号を32メルで分割された周波数バンドで分析するため、各バンドはクロスオーバーを使用することなく個別に処理されます。スペクトラル成形は、個別の各バンドに棚型フィルターが備わり、スレッシュホルド、時定数、そして減衰量が音のソースに応じて自動的に設定される32バンドのダイナミックEQであると考えることができます。これは、更にトランスペアレントな構造を持ちつつ、継続的に入力信号の周波数成分を注視し、それに応じてプロセッシングを調節するダイナミック・コントロールなのです。

操作項目

Neutrinoの各モード

エンジニアとして、我々は、例えば、ボーカル、ドラム、ベース、そしてギターに1176を使用するといった具合に、様々な音源に対して単一のシグナル・プロセッサーを使用するのが習慣となっています。しかし、よく考えてみると、それらの楽器はそれぞれ固有の響きを持っていることが分かります。スペクトラル成形のようなアルゴリズムがあれば、各オーディオソースに対するプロセッシングのパフォーマンスと動作をカスタマイズすることが可能となります。このため、Neutrinoには4つのモードがあります。

  • Vocals/Dialogue Mode(ボーカル/ダイアログモード)は中域と高域のプロセッシングに焦点を当て、清澄性とディテールを加えることにより、耳障りになることなくボーカルをミックスの前面に出すことができます。
  • Guitar/Instrument Mode(ギター/インストゥルメントモード)はレゾナント周波数を均しつつ、楽器の持つ真正のキャラクターを保持します。
  • Bass Mode(ベースモード)は突出したノートを緩やかに減衰し、エレクトリック、アコースティック、そしてシンセベースにパンチとウェイトを加えるべく設計されました。
  • Drums/Percussive Mode(ドラム/打楽器モード)はトランジエントのディテールを強調しつつ、打楽器トラックのサウンドを曇らせたり緩ませたりする要因となる周波数ビルドアップを最低限に抑えます。

これらモードは、周波数スペクトラムの中で微妙に異なるエリアに焦点を当てているため、選択したモードに応じて、Neutrinoが微妙にオーディオの音質的なバランスを変えているのが聴き取れることと思います。特定のギタートラックでは、ベースモードの方が良い結果となるかもしれません。しかし、問題はありません。自身の耳を頼りに、自分の音楽に最も合うのは何かを探し出すべく、楽しんで作業してください。得られたサウンドにご満足頂けるのであれば、それ以上、我々から申し上げるべきことはありません。

Detail(ディテール)

Detailノブは、周波数スペクトラム全体のプロセッシングにおける精度の細かさを調整します。Neutrinoはコンスタントに入力信号を聴いて調整しているため、設定を変える際は、僅かな変更に留め、一旦間を置いてからその変更が信号に及ぼす影響を確認して頂くことをお勧めします。

類似点は認められるものの、Neutrinoは、アナログサミング、トランスフォーマー、そしてテープのようにそれら独自の“音的キャラクター”をオーディオに添加するようには設計されていないことを理解頂くことが重要です。これらのアナログ機器は、しばしば独特の歪み特性を付加します。Neutrinoは一切のディストーションを付加することなく、できる限りトランスペアレントにオリジナルの信号を保存することに特化して設計されました。

Amount(分量)

Amountノブは、Neutrinoのダイナミック・プロセッシングが適用される分量を調整します。