アシスタント機能 (Assistants)
概要
Neutron 3には、ミキシング全体とトラック単体の出発点を提案する2つのアシスタント機能があります。これにより、皆 さんはミキシングのクリエイティヴな部分にだけ集中することができます。Mix Assistant、 またはTrack Assistantを使用して、提案された出発点からミキシング・ セッションをスタートすることをお勧めします。
アシスタント機能へのアクセス
アシスタント機能を最大限に活かすには、適切なタイミングでアシスタント機能を使うことが重要になります。Neutron 3 のマザーシップ・プラグインでは、「Mix Assistant」ボタンをクリックして アシスタント機能にアクセスします。
アシスタント機能の画面が開いたら、以下の2つのオプションが表示されます。
- Balance を選択すると Mix Assistantの設定に進みます。
- Track Enhance を選択すると Track Assistantの設定に進みます。

ヒント:最初にMix Assistantを使うとベストな結果に
Track Assistantの前にMix Assistantを使用することをお勧めします。Mix Assistantは全トラックの音量レベルのバラン スを調節する機能で、何も処理されていないセッションの方が、より正確な結果を提案できるからです。
注意:Track AssistantとMix Assistantは同時に使用できません
Track AssistantとMix Assistantは同時に使用できません。但し、いずれのアシスタント機能も、もう一方のアシスタント 機能を上書きすることはありません。
Mix Assistant(ミックス・アシスタント)
NeutronのMix Assistantは、お好みのトラックを中心とした全トラックのレベル・バランスを整え、ミキシングの出発点を 提案します。
- Mix Assistantへの_アクセス_は、Neutron 3 Advancedのマザーシップ・プラグイン またはNeutron 3の Visual Mixer(ヴィジュアル・ミキサー) から行えます。
- Mix Assistantは曲を聴き、IPC対応のiZotope製プラグインのレベルを調節します。以下の表は、どのプラグインがMix Assistantに対応しているかをまとめたものになります。
プラグイン | Mix Assistantへのアクセス | Mix Assistantに対応 |
---|---|---|
Neutron 3 Advanced mothership | ✓ | ✓ |
Neutron 3 Standard mothership | X | ✓ |
Neutron 3 Visual Mixer | ✓ | X |
Neutron 3 Equalizer | X | ✓ |
Neutron 3 Compressor | X | ✓ |
Neutron 3 Exciter | X | ✓ |
Neutron 3 Gate | X | ✓ |
Neutron 3 Transient Shaper | X | ✓ |
Neutron 3 Sculptor | X | ✓ |
Relay | X | ✓ |
お勧めワークフロー
Neutron 3 Advancedマザーシップ・プラグイン、Neutron 3コンポーネント・プラグイン、そしてRelayを使って、全トラッ クの音量レベルを自動調節していきます。Mix Assistantでベストと考えられる結果を導き出すためには、新規のセッショ ンに未処理の状態のステムやトラックを用意することが重要になります。ここでは、2種類のお勧めワークフローを紹介し ていきましょう。
注意:DAWのフェーダーは触らないでください
Mix Assistantを使用する前に、DAWのフェーダーが0dBであることを確認してください。つまり、DAW側のフェーダーは触ら ないでください。できるだけ「素」の状態であることで、Mix Assistant機能が良い結果を出しやすくなります。
マザーシップ・ワークフロー
以下の手順で、Mix Assistantをスタートさせます
- セッションに必要な全トラックを用意します。トラック数が多いほど、Mix Assistantは威力を発揮します。
- Relayを各トラックの最上段にインサートします。
- Neutronマザーシップをインサートします。どのトラックでもOKです。
- 「Mix Assistant」ボタンをクリック。次に Balance を選択してMix Assistantをスタートさせます。
ヴィジュアル・ミキサー・ワークフロー
Visual Mixerを使って音量レベルや定位を調節したい場合、Relayがエフェクト・プラグインの最下段にインサートされて いることを確認してください。
- セッションに必要な全トラックを用意します。トラック数が多いほど、Mix Assistantは威力を発揮します。
- Visual Mixerをマスター・バスにインサートします。
- Visual Mixer 画面上で「Mix Assistant」ボタンをクリックして、Mix Assistantをスタートさせます。
Mix Assistantの各ステップ
Mix Assistantでは以下のステップで作業を進めていきます。
それぞれのステップで、Mix Assistantがベストな結果を出せるよう、皆さんにやっていただきたいことがあります。

注意:プラグインの選択は各トラックひとつずつ
バスを使用している場合は、バスまたは個別トラックのいずれかを使用してください。両方を選択しないでください。ま た、同じトラックでNeutron 3 AdvancedとRelayのプラグインをインサートしている場合は、いずれかのプラグインのみ を選択してください。
ヒント:望んだ結果にならなかった場合のチェック項目
- バスを使用している場合、バスまたは個別トラックのいずれかだけを選択しましたか?Mix Assistantは両方のバランス を整えることはできません。
- DAWのフェーダーとパン(定位)はゼロになっていましたか?
- セットアップのステップで、適切なプラグイン(トラック)をFocus(中心)に設定しましたか?
- 同じトラックに複数のiZotope製プラグインをインサートしている場合、セットアップのステップで選択するプラグイン は「ひとつだけ」にしてください。
1. SETUP(セットアップ)
右側の星マークでミキシングのFocus(中心)となるトラックを選択してください(複数でも可)。その後、画面下部にあ る Begin Listeningボタンをクリックします。

この画面では、セッション内で使用されているアシスタント機能対応プラグインがすべて表示されています。各トラック に対して選択するプラグインは「ひとつだけ」にしてください。また、このステップではまだ音楽を再生しないでくださ い。
注意:最低でもひとつのトラックをFocus(中心)に設定してください
このステップでは、ミキシングのFocus(中心)となるトラックをひとつ以上選択してください。これを行うまで次のス テップには進めません。Focusは、ご自身がミックスの中で最も重要とするトラックになります。リードボーカルが2ト ラックある場合などは、複数のトラックをFocusすることも可能です。しかしながら、全てのトラックをFocusしても良い結 果が得られるわけではありません。
2. WAITING(再生待ち)
DAWのプレイヘッドを曲の最初に移動させてから音楽を再生してください。Mix Assistantが、皆さんの曲を聴き始めます。

Mix Assistantは曲をちゃんと聴かないことには何も提案ができません。ですので、必ず曲の最初から最後までしっかり聴 かせてあげてください。
注意:Mix Assistantは再生中の曲を聴くことができません。
曲の再生中に「Begin Listening」ボタンをクリックした場合、Mix Assistantはその曲を自動で聴くことはできません。ま ず曲の再生を停止し、必ずプレイヘッドと曲の最初に移動してください。トラック数や再生時間の長い曲の場合は少々遅れ る可能性もあります。その時は、再び最初からやり直してみてください。
3. LISTENING(リスニング)
曲の最後にきましたら、Go To Results ボタンをクリックして、次のステップに進みます。Go To Results ボタン をクリックしない場合、Mix Assistantは曲を聴きつづけます。

Mix Assistantは各トラックの全体的な音量レベルを聴き、それぞれの楽器をグループに分類します。
4. AUDITION AND ADJUST(試聴・調整)
Mix Assistantが音楽を聴き、それぞれの楽器をグループ分けしました。ここからは皆さんの出番です。
- Mix Assistant の提案を試聴する。
- Group Sliders(グループ・スライダー)でお好みのレベル・バランスに微調 整します。
- Bypass Assistant(バイパス・アシスタント) ボタンをクリックして、 Mix Assistantの結果と元のレベル・バランスを聴き比べます。
- Group SlidersとFocusの分類をEdit(編集) します。
Group Sliders(グループ・スライダー)
Group Slidersを使って、お好みのレベル・バランスに微調整します。
Group Slidersとは?
Group Slidersは、Mix Assistantが皆さんの曲を聴いた結果に基づいて作成されたものです。ま ず、Mix Assistantは、皆さんの曲から学んだ全ての情報を基に、各トラックをグループに分類します。
その後、Mix Assistantは以下のグループのターゲット・レベルを設定していきます。
- Focus: Focusに設定されたトラック
- Voice: ボーカルとして分類されたトラック
- Bass: ベースとして分類されたトラック
- Percussion: ドラムス/打楽器として分類されたトラック
- Musical: その他の楽器として分類されたトラック
各グループに音量レベルのスライダーがあります。各スライダーはグループ同士で釣り合いの取れたレベルに調節されてい ます。これらのスライダーを調節する時、皆さんはMix Assistantが提案したターゲット・レベルを変化させることになり ます。
Mix Assistantは、グループの中で各トラックのゲイン調節を行い、グループのトータル・レベルが、グループ・ スライダーに設定されたターゲット・レベルに達するようにしています。
Group Sliders の調節範囲は、+/- 12 dBになります。
Group Slidersをお好みで調節しましょう
提案されたGroup Slidersの設定で満足しなかった場合ですが、これはあくまで提案の一つですので、ご自身の曲に合うレ ベル・バランスをいろいろと試してください。
Group Sliderの反応
Group Slidersでは、楽器が認識されなかったグループは調節が無効になります。セットアップのステップで、全てのト ラックをFocusに設定した場合、Focusのスライダーのみが有効になります。また、グループに分類されなかったトラックも 調節が無効になります。
Bypass Assistant(バイパス・アシスタント)
このボタンは、スライダーを無効にすると同時に、Mix Assistant機能を使用する前の状態を聴くことができます。ゲイ ン・マッチング: Mix Assistantの結果を試聴している時、バイパスされた状態と処理後の音量レベルがマッチングされ ます。音量レベルの変化がないため、この2つのパランスの違いを聴き比べる時に便利です。

メモ:ミキシングの全体的な音量レベルが小さくなることがあります
クリッピングを防止するため、Mix Assistantはミキシングの全体的な音量レベルを下げる傾向にあります。したがって、 Mix Assistantの提案がオリジナルの音量レベルよりも小さくなることがあります。
EDIT(編集)
画面の右下にある “Edit Classifications” ボタンをクリックして、各グループに分類されたトラックを編集すること ができます。トラックをFocusに設定し直したり、別のグループに分類し直したりすることが可能です。Mix Assistantは、 皆さんが編集した内容をGroupに反映させます。

注意:プラグイン・リストの編集について
セットアップのステップで選択されなかったプラグインは、Editのプラグイン・リストには表示されません。また、このリ ストにプラグインを追加することもできません。更に、Mix Assistantが音楽を聴いている最中に、IPC対応プラグインがイ ンサートされたトラックを新たに追加した場合も、このリストにそのプラグインが表示されることはありません。
5. ACCEPT(承認)
ミキシングのレベル・バランスに満足したら、 Accept(承認) ボタンをクリックします。ここで選択されたプラグイ ンのレベル設定が適用されます。
- Mix Assistantの提案や、その後のご自身による編集や調節、どれも満足できなかった場合は、Mix Assistantの画面を閉 じてオリジナルの状態に戻ります。
- Bypass Assistantボタンがオンになっていると、「Accept」ボタンがクリックできませんのでご注意ください。
ヒント:調節された出力ゲインをVisual Mixerで見てみましょう
調節された出力ゲインは各プラグインでも確認できますが、Visual Mixerで全プラグインの出力ゲインを確認するのが最も 簡単な方法になります。
注意:「Accept」ボタンをクリックしたらGroup Slidersには戻れません
「Accept」ボタンをクリックしてMix Assistantの画面を閉じたら、Group Slidersの画面には戻れません。Group Sliders の画面には戻るには、もう一度Mix Assistantのステップを最初から行う必要があります。皆さんが「Edit Classifications」で変更を加えていない限り、Mix Assistantは全トラックを聴き直します。
Track Assistant(トラック・アシスタント)
Track Assistantは、トラックの出発点を提案する機能です。Track Assistantはトラックを注意深く聴き、Neutronの様々 なパラメータを調節して、そのトラックにふさわしい提案をします。その提案を基に、皆さんはNeutron 3の各モジュール をアーティスティックな調整することができます。
お勧めワークフロー
Track Assistantは、他のトラックとのバランスなどとは関係なく、インサートされたトラックのみを聴いて処理を行いま す。Track Assistant機能の使用方法は以下の通りです。
- Neutron 3のマザーシップ・プラグインをトラックにインサートします。
- マザーシップ・プラグインを開いて、Track Assistantボタンをクリックします。
- Instrument(楽器の種類)、Style(スタイル)、Intensity(エフェクトの掛かり具合)をそれぞれ選択します。 InstrumentではAuto-detectを選択することで、Neutronが自動的に何の楽器かを聴き分けてくれます。
- 設定が終わりましたら、Nextボタンをクリックします。
- DAWで音楽を再生すると、Track Assistantがトラックの処理を始めます。
- Track Assistantが提案した出発点をチェックします。
- Accept ボタンをクリックして、結果をトラックに適用させます。
メモ:Track Assistant の処理時間
Track Assistant機能を使用する時、音楽の再生から分析をスタートして調節を行うまで約4秒から10秒かかります。Track Assistantが処理を行っている最中は、Neutronの他の機能へのアクセスはできません。
Track Assistantのセッティング
このセッティングは、Track Assistantが出発点を探すためのガイドラインとなります。これらのセッティングが、エフェ クトの掛かり具合、マルチバンドの数、コンプレッションのレシオなどを決めていきます。

セッティング | 説明 |
---|---|
INSTRUMENT(楽器の種類) | 楽器の種類を選択します。この情報に基づいてTrack Assistantがパラメータや Sculptorモジュールのモードを設定します。リストに該当する楽器が見当たらない場合は、以下のオプションを選択してみてください。Other(その他): その他の楽器(シンセ、ディジュリドゥ、ブブゼラなど)Auto-Detect(自動判別): Track Assistantが自動で楽器の種類を判別します。 |
STYLE(スタイル) | 以下の3つのオプションからお好みのスタイルを選択します。 Balanced(バランス): 多目的な処理で豊かなサウンドにします。 Warm(あたたかみ): 低域を僅かに強調して心地よいサウンドにします。Upfront(存在感): 中域を強調して存在感のあるサウンドにします。 |
INTENSITY(エフェクトの掛かり具合) | 以下の3つのオプションからエフェクトの掛かり具合を選択します。Low(低): わずかな調節と処理になります。 Medium(中): 聴いて変化が分かるほどの適度な処理になります。 High(高): トラックを前に押し出すようなアグレッシブな処理になります。 |
ヒント:さまざまなセッティングを試してみましょう
Track Assistantが求めているサウンドを理解してくれないなと思ったら、いろいろな Track Assistantのセッティング Track Assistantは、StyleとIntensityの組み合わせで9通りの提案ができます。更に、オーディオのタイプに合わせて6通 りのプリセットが用意されていますので、合計で54通りの提案が可能になります。
Track Assistantのプロセス
Track Assistantの処理は、セッティングの情報と入力されるオーディオに基づいて行われます。Track Assistantは以下の ステップでプロセスを進めていきます。
- オーディオデータを楽器の種類に基づいて識別します。
- そのオーディオから信号の流れ、つまりモジュールの順序を決めます。
- ここでSculptorモジュールのターゲット・カーブも設定されます。
- マルチバンド・モジュールのバンド数を決めます(最低1バンド、最高3バンド)。
最終結果: モジュールの順序に加え、EQカーブ、Compressor、Sculptor、Exciterの調節が施されたプリセットが完成 します。
Track Assistantが行う各モジュールの調節
Track Assistantはオーディオの情報に基づいて、マルチバンド・モジュールにクロスオーバー・ポイントを設置します。 オーディオの周波数スペクトラムから複数の最低値を特定するなどの基準に基づいて、自然なクロスオーバー・ポイントが 決定されます。
モジュール | Track Assistantが行う調節 |
---|---|
Equalizer(EQ:イコライザー) | 最適なシェルフ・ポイントとピークにフィルター操作点を設置して基本となるカーブを決めます。また、オーディオの情報に基づいて、フィルター操作点にはブースト/カット、静的/動的(ダイナミック)、そしてベル/シェルビング・フィルターが選択されます。Track Assistantは、オーディオの目立つ周波数エリアに、これらのフィルター操作点を配置します。 |
Exciter(エキサイター) | Exciterのプリセットを用いて、X/Yパッド上のTube/Tape/Warm/RetroやDry/WetのMixなどのパラメータを決めます。また入力信号の強さに応じてDriveの量も設定します。 |
Compressor(コンプレッサー) (x2) | 入力信号のレベル(LKFS)に基づいて、Threshold(スレッショルド)を決めます。この機能はコンプレッサー処理で「スイートスポット」を探す際の時短になります。これにより、皆さんはクリエイティヴな時間をより多く過ごせます。 |
Sculptor(スカルプター) | シグナル・チェーンの最初に配置され、Instrumentでの選択された楽器の種類に基づいてターゲット・カーブが設定されます。 |
Gate(ゲート) | シグナル・チェーンからは削除されます。 |
Transient Shaper(トランジエンド・シェイパー) | バイパスされます。 |
お願い:TRACK ASSISTANTをより良い機能にするために
Track Assistantがオーディオファイルを誤って識別するような場合は、そのデータをiZotopeのカスタマー・ケア までお送りください。