イコライザー #
概要#
Ozoneのイコライザーはアナログ型フィルターによる温かみとキャラクターの付与、そしてデジタルリニア位相フィルターによる精緻な周波数の増減の両方を実現します。メインのOzoneプラグインとOzoneアプリケーションでは、EQ及びポストEQの2種類のEQモジュールが使用できます。また、Ozone 8 AdvancedではコンポーネントプラグインとしてEQを使用することもできます。
EQの画面表示#
OzoneのEQモジュールを使用する際は、用途に応じて3種類の表示オプションを選択することができます。
スペクトラム画面#
これはスペクトラム表示エリアが拡大され、バンドのパラメーターの詳細が縮小された画面モードです。バンドのパラメーターは、有効なバンドのEQ操作点を使用することで調整できます。バンドの有効化と無効化は、スペクトラム表示下部の電源ボタンで切り替えることができます。操作点を調節すると、異なる曲線が表示されます。白線は全EQ帯域のコンポジットであり、各バンドの線はそれぞれ別の色で細めに表示されます。
スペクトラム画面でEQバンドのパラメーターを調整するには#
- 周波数: EQ操作点を左右に動かすと周波数が調整できます。
- ゲイン: EQ操作点を上下に動かすと周波数が調整できます。
- Q (帯域幅): バンドの両端にあるハンドルをマウスで動かすことにより、そのEQバンドの帯域幅(Q)を調整することができます。クリックしてドラッグ、あるいはマウスやトラックパッドのスクロール機能でも選択されたバンドの帯域幅の調整を行うことができます。
- フィルター形状: EQ操作点を右クリックすると、フィルター形状のオプションを含む関連メニューが表示されます。このメニューを開くと、そのとき使用されているフィルター形状がハイライトされた状態で表示されます。メニューの内の別のフィルター形状を選択することで、そのバンドに使用するフィルター形状を変更することができます。フィルター形状の変更が行われる、あるいはここを変更することなくインターフェース内の別の箇所をクリックすると、関連メニューは自動的に閉じます。
全バンド画面#
この画面では各バンドの基本的なパラメーターの数値の概要が表示されます。各バンドの周波数、ゲイン、Qは以下を行うと調整できます:
- 表示された数値をクリックし(左右または上下に)ドラッグ。
- 数値をダブルクリックし、手動で新たに数値を入力。
詳細バンド画面#
この画面では選択されたバンドのタブに関するパラメーターの詳細が表示されます。これがEQ表示のデフォルトとなります。
操作項目#
EQモジュールは、多くのパワフルな操作項目を使用して調整します。選択された表示モードによっては、表示されない操作項目もあります。表示モードを変更するか、あるいはスペクトラムエリアにてEQ操作点を使用することで、種々の操作項目にアクセスすることができます。
グローバルフィルターEQモード#
グローバルEQフィルターのアルゴリズムが変更できます。EQモードの選択肢は以下の2種類です:
- ANALOG(アナログ): 旧式のアナログEQを模しており、音像に彩りが付与されます。このモードではIIR(無限インパルス応答)フィルターを利用します。
- DIGITAL(デジタル): 精緻で分析的な音像のEQモデルです。このモードではFIR(有限インパルス応答)フィルターを利用します。
Digitalモードを選択すると、更に2つのパラメーターが追加されます:
- PHASE(位相): イコライザーをDigitalモードで使用すると、各EQバンドの位相スライダーが使用できるようになります。位相スライダーが0%に設定されていると、そのバンドはリニア位相特性になります。 位相スライダーが100%にセットされていると、そのバンドは最小位相特性になります。
- SURGICAL MODE(整形モード): Surgical Modeを有効にすると、フィルター曲線は音楽的ではなく、精緻な整形に適した形状になります。
フィルター形状#
Analog及びDigitalモードでは、両方とも8つのEQ操作点のタイプまたは形状を選定することができます。各操作点は以下のEQフィルター形状に設定できます:
- ローパスフィルターとハイパスフィルターはバタワースフィルターです。パスバンドまたはストップバンドで細波音や共鳴音が生じることなく最大限フラットになるよう最適化されています。
- ブリックウォールのローパスフィルターとハイパスフィルターは楕円フィルターです。急なスロープでパスバンドまたはストップバンドで生じる細波音が極小になるよう最適化されています。
- 有名なプルテックアナログイコライザーをモデルに作られたビンテージタイプのフィルターは、単一の操作点で複雑なスロープを描くことができます。
Frequency/Gain/Q(周波数/ゲイン/帯域幅(Q))#
詳細バンド画面モードでは対応したスライダーを使用するか、あるいは数値をダブルクリックして手動で別の数値を入力することで、選択されたバンドの周波数、ゲイン、帯域幅を個別に調整することができます。スペクトラム画面では有効化されたバンドの周波数、ゲイン及びQを前述の方法で調整することができます。
マッチングEQ#
マッチングEQは、精密なマッチングを実現する8,000バンド以上の周波数を使用するリニア位相EQです。
ワークフロー#
マッチングEQパネルへアクセスするには、EQを詳細バンド画面にし、Analog/Digitalボタン直下にあるMatchingボタンをクリックします。
ソース曲線のキャプチャ#
ソース曲線の下にあるCaptureボタンを押し、作業しているトラックを再生すると、スナップショットの取得が始まります。Stopボタンを押し、キャプチャを停止すると、曲線の形状がフリーズします。
ソース曲線はキャプチャされると、EQスペクトラムアリア内に黄色で表示されます。
キャプチャされた曲線に満足が行かない場合は、Clearボタンを押してソース曲線をクリアし、もう一度キャプチャの作業をやり直してください。
ターゲット曲線のキャプチャと選択#
曲線にマッチさせたいトラックがある場合は、“Custom”オプションを選択してください。その上でトラックをインポートし、オーディオがOzoneを通過することを確認してください。アプリケーションでは、ターゲットのトラックをセッションにインポートし、そのトラックのタブが選択された状態で曲線をキャプチャすることもできます。Ozoneアプリケーションでは全トラックが同じターゲット曲線を共有します。カスタムターゲット曲線は、スペクトラムエリアに青で表示されます。
自身でリファレンスをキャプチャする以外にも、“Pink Noise”または“6 dB Guide”のプリセットターゲット曲線を選択することができます。
Pink Noise及び6dB Guideターゲット曲線
- これらのスナップショットには、多くの商用録音に見られる高周波数ディケイが組み込まれております。これらはガイドとして自身のスペクトラムと比較してお使いください。
- 一般的に、多くの録音は6 dB曲線が採用されており、より新しい録音にはピンクノイズスペクトラムが使用される傾向にあります。
- これらガイドの位置や全体的なレベルを調整することができませんので、これらは自身のスペクトラムの描写曲線として使ってください。これは(ミックスの絶対的なレベルではなく)音的なバランスを定義するスペクトラムの曲線となります。
マッチ曲線の設定#
ソースとターゲット曲線を設定した後に、Matchingボタン左にある電源ボタンを押すと、EQマッチ曲線を有効にすることができます。マッチ曲線は白い曲線で表示されます。この曲線はAmount(量)とSmoothing(円滑化)設定により更新されます。
マッチングEQの注
- マッチ曲線が100%になり、スムーシングが0%になると、“リファレンス”のミックスに対して、技術的には一番近い状態となりますが、実際的には最も効果的なコンビネーションであるとは言えないでしょう。この設定では、全てのピークや底を完全にキャプチャしようとしますので、極端に不自然なEQという結果になります。
- 我々はマッチ曲線を50%以下に留めておくことを推奨します。マッチングEQ曲線のピークと底の間隔が狭い場合は、スムーシングを増加させ、より平滑な曲線にしてください。ここでの目的は、あくまでもリファレンスの全体的な音的形状をキャプチャすることであり、完全なるマッチングを行うことではありません。
- AnalogまたはDigitalボタンをクリックするとメイン画面へ戻ります。その後も、更なるイコライゼーションの調節のため、引き続きEQ操作点は機能します。この作業は必ずしも必要なわけではありませんが、状況に応じて手動で微調整を施してください。
M/S及びL/Rモード#
イコライザーにはステレオ、Mid/Side及びLeft/Rightの処理モードがあります。詳細はモジュールの標準的な操作項目の処理モードのセクションをご参照ください。
メーター尺度#
- EQ GAIN SCALE(EQゲインスケール): EQ曲線のゲインスケールはスペクトラム画面右側に表示されます。
- SPECTRUM MAGNITUDE SCALE(スペクトラム振幅スケール): スペクトラム振幅(dB)スケールはスペクトラム画面左側に表示されます。
- SPECTRUM FREQUENCY SCALE(スペクトラム周波数スケール):スペクトラム及びEQ曲線の周波数スケールはスペクトラム画面上部に表示されます。
注
- 設計により、EQとスペクトラムのスケールは異なります。これが同一だと、使用に能うほど十分にスペクトラムが見えなくなります。グレーで表示される周波数スケールは、EQとスペクトラムの両方に適用されます。
- Spectrum Optionsタブにアクセスするか、あるいはスペクトラムを右クリックして関連メニューから“Spectrum Options”を選択すると、スペクトラムのオプションを設定することができます。
Alt-Solo(Alt-ソロ機能)#
Altキーを押しながらスペクトラムをクリックすると、“オーディオ虫眼鏡的“機能を使用することができ、EQの設定に影響を与えることなく、マウスカーソル下の周波数のみの試聴が可能となります。これは、EQバンドを変更せずにミックス内の周波数の位置がピンポイントで特定できる便利な機能です。マウスのボタンを放すと、通常のEQのサウンドに戻ります。EQオプション画面の “Alt-Solo Filter Q”にてデフォルトの帯域幅を設定することができます。